『魔弾の射手』の世界 謎が満載の不思議の国へようこそ! 

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先日、兵庫芸術文化センターで、オペラ『魔弾の射手』を見る機会がありました。

夏向けにふさわしい?ちょっと怖いシーンもありましたが、とても素晴らしい作品で、1650年頃のボヘミアが舞台だそうです。

オペラを楽しく鑑賞した後、いろいろ驚いた点や疑問に思った点があったので、調べてみました。

舞台と時代

ボヘミアは現在ではチェコの中・西部を指しますが、当時は神聖ローマ帝国に支配されていました。

世界史でも登場する神聖ローマ帝国は、「ローマ」と名がつくけれど、実はオーストリア大公ハプスブルク家が支配するドイツ文化の国。

この地域ではカトリックとプロテスタントの争いや、広大な地域を支配するハプスブルク家への不満から三十年戦争という長い戦いがあり(1618~1648年)、ドイツやチェコは戦場となり、農民人口の30%以上が略奪や殺りくによって抹殺されたのだとか。

『魔弾の射手』は、このような伝統の破壊と残虐の時代に起こった物語。下の写真はパンフレットの表紙です。

オペラの最初に、作品の舞台や時代背景について、長いテロップで説明があった時には、『スターウォーズ』の冒頭を思い出しました。

狩人と農民

日本でも戊辰戦争の時には、会津藩や長州藩が、銃を扱える猟師を動員したという話を聞きました。

三十年戦争の時代には、ドイツやチェコでも猟師を動員したようです。

ドイツでは「猟兵」(イェーガー)と呼ばれました。

元々はスウェーデンで創設され、軽装備で機動力があることを武器にして、通常の歩兵とは異なる任務(狙撃戦など)に使用され、一種のエリート扱いでした。

だから自他ともに、農民より少し上と思われていたのでしょう。

猟師の方が農民より身分が上というのは、日本ではあまり聞いたことがないですね。狩猟文化の違いでしょうか。

護林官(森林官)と狩人

護林官は領主の財産である森林や狩猟の管理にあたる役人で、『魔弾の射手』の時代には、狩猟や林業によって領地の産業が成り立っていたため、責任重大なポストだったようです。

護林官は、狩人を部下にして、狩猟を管理していたのですね。

彼らは、「フォルストハウス」(森の家)と呼ばれる宿舎に住み込むことが一般的でした。

天井や壁にひびが入り、連日壁の肖像画が落下するアガーテの部屋も、フォルストハウスの内部だったのかな?

ちなみに現在でも、護林官はドイツのれっきとした公務員。ほとんどの方が狩猟免許を取得しておられます。

これに加えて、ドイツにはプロの狩人が、現在も1,000人はいるとか。

日本でも林野庁の出先機関である各地の森林事務所で、国有林の管理を行っている公務員は「森林官」と呼ばれています。日本にもおられたのですね。知りませんでした。

狩人たちの使う鉄砲

当時のドイツでは、16世紀にライフル銃が製造されていました。

しかしライフル銃の製造技術を継承するマイスター(親方)はまだ少数で、ギルドによって技術は保護されていました。

そのため多くの国々が、ドイツ製のライフル銃と、その扱いに長けたドイツ人傭兵を自国の軍に配備しました。

世間一般では、まだまだライフル銃よりもマスケット銃(幕末の日本では「ゲベール銃」と呼びました)の時代。

あの『三銃士』が持っていたのも、マスケット銃でした。

マスケット銃とライフル銃の性能差はすさまじく、幕末の戊辰戦争では、銃の性能が戦いの勝敗を決めたと言われます。

『魔弾の射手』の狩人たちは、どちらを使っていたのかな?

銃弾は手作り?

悪魔に魂を売った狩人のカスパーは、恐ろしい狼谷で、怪しげな材料から「魔弾」を作ります。

普通の銃弾も手作りなのかな?

もしそうなら、狩人や銃を扱う兵士は、ちょっとした金属加工の技術にも通じていなければなりません。これってハードルが高いのでは?

日本では、戊辰戦争の会津軍や西南戦争の西郷軍が、自分たちで鍋釜や敵の銃弾を溶かして銃弾を作っていたようですが、ドイツではどんな供給体制だったのでしょうか?

幽霊よりも怖いもの

『魔弾の射手』はホラー・オペラといわれるように、幽霊や化け物、怖い夢や怪談話が登場します。

日本だと、妖怪やお化けや鬼も怖いけれど、とりわけ幽霊は最強!

でも、『魔弾の射手』では、幽霊は何もしなくて(危害を加えない)、もっと最強の怖い存在が登場します。

それが、悪魔ザミエル。演出がすごくて、本当に怖かった。

まさかオペラで「エロイムエッサイム」というセリフを聞くとは。

『悪魔くん』が懐かしいです。

森の隠者の衣装

このオペラでは、森の中で修道生活を送っている男性(隠者)が登場し、その知恵と人徳と祈りの力で、多くの人々に慕われています。

この隠者の衣装ですが、黒っぽい修道服に縄のようなベルトだったような気がします。

そうすると、彼は清貧をモットーとするフランシスコ会の修道士かな?

でも気になるのが、悪魔ザミエルも同じような服装だったこと。

神と悪魔は光と影

この衣装の件で、再度「エロイムエッサイム」という悪魔を呼び出す呪文が気になり、調べてみました。

「エロイム」(「Elohim」)は、ヘブライ語で「神」という意味。

「エッサイム」はフランス語で「群れ」、ヘブライ語の「悪魔」などいろいろな説があります。

とにかく、悪魔も「悪い神」。幽霊や化け物の「小者」とは、格が違うのがよくわかりました。

日本で悪魔にあたるのは?

日本は一神教ではないため、このような「悪魔」(悪魔も複数いるみたいですが)的に恐れられたものってあるのかなと、考えてみました。

早良(さわら)親王や橘逸勢、菅原道真、平将門など、政争に敗れ恨みを残して亡くなった人は怨霊となったため恐れられましたが、西洋の「悪魔」とは雰囲気が違う。

彼らは神様になって祀られているから、今はそこまで怖くないです。

「地獄の主」「悪の中の悪」という存在が、日本にはないのかもしれません。

「契約」という概念も、日本にはないですね(契約しなくても、お互い忖度で動いてます!)。

同様に、神々も仏さまもたくさんいて、他を圧する存在という神仏もいないように思えます。

「超大物」はいないけど、関係ない通りすがりの人でも脅かす幽霊とか地縛霊が、そこそこいそうな日本の方が、やっぱり怖いかな。

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2 件のコメント

  • 阿寒湖温泉で味わう地元グルメ ワカサギとエゾジカをランチで食す | れきたびcafe へ返信する コメントをキャンセル

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