『英雄たちの選択』世界史進出! 砂漠の小都市がローマ帝国に対してとった選択は?

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先週、NHKBSの人気番組『英雄たちの選択』を見る機会がありました。

驚いたことに、舞台は世界史(番組史上初めて世界史を取り上げたらしい)。

しかも三国志とかナポレオンみたいな、メジャーな題材でなくて「ナバテアvsローマ帝国」。

ローマ帝国は知っている。でも「ナバテア」って??? 世界史でも学びませんね。

でも実は、とても有名で、そして面白い国だったのです。

見逃した方々のために、どんな内容だったか、簡単に紹介しましょう。

ナバテアとはヨルダンのペトラを中心とする古代王国!

日本人の間でも人気の高い、ヨルダンの世界遺産ペトラ。

映画『インディジョーンズ最後の聖戦』のロケ地になったようです(まだ見てない)。

私も2008~2009年の冬に訪れました。2日連続訪れたけど、それでもまだ物足りない遺跡です。

暗くて狭い「シーク」と呼ばれる峡谷を抜けると、いきなり現れる荘厳な建物「エル・カズネ」(宝物殿)が印象的。

「ペトラ」とはギリシア語で「崖」という意味。崖の多い大地溝帯の上にあるそうです。

紀元前1世紀頃~紀元2世紀頃に繁栄した世界遺産のペトラこそ、古代ナバテア王国の首都でした。

ペトラが繁栄した理由

1 砂漠の隊商都市

岩礁地帯のペトラは農業には不向きで、住民の多くが隊商(キャラバン)活動に従事しており、シルクロードを行き交う隊商の中継基地として、また交通の要衝として繁栄しました。

交易品は、地中海世界の宗教儀式で使う乳香や没薬(もつやく)という香料、そして死海産の瀝青(れきせい)と呼ばれた天然アスファルト(船の防水加工やミイラの腐敗防止に不可欠)。いずれも高価な品々ばかり。

貿易収入と高価な交易品への高い関税。これがペトラ繁栄の秘密でした。

2 高い水道技術

ペトラの遺跡からは、ナバテア王国の高い水道技術がわかります。

この辺りに多い砂岩でできた部屋。建造物の多くは、砂岩を掘りぬいたものです。

砂岩は美しいのですが、水がしみこみやすいため、水路として使う場合はモルタルでコーティング。

貯水槽はもちろん、4度の傾斜角を持つ水道橋や、土器で出来た水道管などもありました。

下の写真はゾウのようにも見えますが、実は頭のないライオン。

ライオンの口から、雨水が吐き出される仕組みになっていたそうです。

水道橋も、ローマ帝国好みの一直線ではなく、地形をうまく利用したようです

石灰が溜まりやすい硬水のため、2~3年ごとに取り替えるなど、メンテナンスも万全。

現在の東京都民が使う、3倍の水を消費できたのだとか。

水源も敵に見つからないように(「水の手」を切られたら敗北!)、うまく隠していたそうです。

このためローマ帝国に包囲されても、長期間耐え抜くことができました。

3 巧みな外交戦略

当時の地中海世界(ローマ帝国、エジプト、セレウコス朝シリア、パルティアなど)の中では、ナバテア王国などは砂漠の小国。

その小国が生き抜くためには、外交戦略が必要でした。

天然の要塞でもあるペトラは防御に優れ、いざとなれば立て籠もってゲリラ戦。

乾燥地帯やゲリラ戦が苦手なローマ帝国には、うるさい相手でしょう。

本気になったら勝てるかも知れないけれど、滅ぼすと交易拠点も失われ、ローマ帝国にとってメリットはありません。

それを見抜いたナバテア王国は、ローマ帝国を怒らせても、銀を送って和平に成功。

「(戦国時代の)堺と似てる」と、司会の磯田道史さんは仰っていました。

またすごいのが、その変わり身の早さです。

アクティウムの海戦でクレオパトラ側についたナバテア王国でしたが、敗北必至とみるとあっさり裏切り、オクタヴィアヌス側へ。

そしてオクタヴィアヌスから、これまで通り死海周辺の支配を認められたのです。

「寛容性」を重視するオクタヴィアヌスなら大丈夫、という計算もあったのでしょう。

この「手のひら返し」の早さ! あの真田パパ(真田昌幸)そっくりです。

真田家やナバテア王国など、小国が生き残るためにはこの方法が一番ですね!

情報を握る。相手を見て柔軟に対応を変える。「落としどころ」を模索する。「ずるがしこさ」も時には美徳。

今もこの地域で買い物をするときは、相手の言い値で買ってはだめです(値切りましょう)。

そんな「ずるさ」「老獪さ」が外交には必要で、それは日本人には苦手な部分だと、番組でも話題になりました。日本も小国に学ばないといけません。

宰相シュライオスの選択

今回の「英雄」は宰相シュライオス。

ローマ帝国はナバテア王国の持つ香料交易ルートを狙い、乳香や没薬の産地である南アラビアに侵攻し、香料を独占しようとしました。これに対する選択肢は2つ。

・香料の交易ルートを渡すことはできない、として抗戦するか

・超大国のローマ帝国とは、国力差がありすぎる。ここはひとまず恭順し、香料以外の交易品で生き残る道を探すか

「ひとまず抗戦して自分を高く売る」(小谷賢さん)や「ローマに大義名分がない戦いだし、この頃のローマは内戦続きだから、戦いは長引かない」(青柳正規さん)という抗戦派に比べ、やはり多かったのが現実的な恭順派(大山晃司さんと磯田道史さん。ヤマザキマリさんは中間派のようでしたが)。

実際の選択も「恭順」でしたが、一筋縄ではいきません。

1万人のローマ軍に、兵1,000人を率いて従い、自ら道案内を買って出たシュライオスでしたが、わざと悪路ばかりを使い、遠征を失敗するよう仕向けます。

水不足に苦しんだローマ軍は、南アラビアから撤退。

シュライオスはローマ帝国から処罰されず、香料の交易ルートは引き続きナバテア王国が支配することができました。

ナバテア王国の交易ルートは遠くスイスやスリランカにも及び、『漢書』に登場する犂軒(りけん)という国もナバテア王国のことかも知れないとのこと。すごいですね!

その後のペトラ

106年、皇帝トラヤヌスの攻撃でローマ帝国に併合されたペトラは、その後、地震や交易ルートの変化で廃墟となりますが、住民は古代の水道技術を利用して、農業を営みました。

遺跡の発掘は20世紀初頭から本格的に行われていますが、今も遺跡の85%は未発掘だとか。

番組を見ていると、またペトラに行きたくなりました。再放送もしてくれるかな?

ペトラの魅力が、1人でも多くの方に伝わりますように(上はペトラにいたかわいい猫)。

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