バスティーユ広場からアラブ世界研究所へ行く場合には、セーヌ川を渡ります。
ノートルダム大聖堂への道
セーヌ川を渡るとき、シュリー橋からノートルダム大聖堂が見えました。
この南北2つの塔を見ると、パリに来たんだなと実感します。
よく考えたら、今回訪れたストラスブールでもリヨンでも、ノートルダム大聖堂はあったのでした。
ノートルダムとは、フランス語で「我らの貴婦人」という意味で、聖母マリアを指します。
フランスには過去に何度も聖母マリアが出現したこともあるし(ルルドの聖母など)、マリアに対する信仰がとても篤い国だなと、時々感じています。
アラブ世界研究所の屋上からもよく見えたノートルダム大聖堂に、アルシュヴェシェ橋を渡って行ってみました。
このルートから大聖堂に行くのは初めてです。
大聖堂は初期ゴシック建築の傑作とされていますが、独特の姿は、どの角度から見ても美しく感じました。
ノートルダム大聖堂とジャベール警部
そういえば映画『レ・ミゼラブル』では、ジャベール警部がノートルダム大聖堂を見ながら歌っているシーンがありました(なかなか素敵なシーンでした)。
「ジャン・バルジャンを捕まえることができますように」「パリに法と正義の秩序が行き渡りますように」と、警部も聖母マリアに祈りをささげていたのでしょうか。
ちなみにノートルダム大聖堂の向かいにある、この美しい建物がパリ警視庁だということに、後で気づきました(花を撮影するつもりだったので、建物は二の次でした)。
そして彼が身投げをするのが、このもう少し上流の、その名もノートルダム橋からだそうです。
『レ・ミゼラブル』を初めて子供向きの本で読んでからずっと、ジャベール警部が気の毒でした。
映画でも、ラッセル・クロウの素晴らしい演技と歌声が印象的です。
余談ですが、現在司馬遼太郎さんの『跳ぶが如く』を読んでいるのですが、明治維新の日本が警察制度の手本とした「フランスのポリス」の典型的な例が、ジャベール警部なのかもしれません。
単なる犯罪捜査だけでなく、反政府運動も取り締まり、時には密偵となって反政府勢力の動向を探ったりもしています。
有能な彼なら、今の日本の「共謀罪」を巡る動きに対してどんな感想を持つでしょうか。
ヨハネ・パウロ2世の銅像
大聖堂への道を歩いていると、一体の銅像がありました。
どこかで見た人だなと思ったら、2005年に亡くなられた、ローマ法王ヨハネ・パウロ2世の銅像でした。
彼は死後約8年という、異例の早さで聖人に認定されたそうです。
ちなみにインドでの救貧活動で名高いマザー・テレサは、死後19年目で聖人になったとか。
普通の人なら、死後数十年、数百年かけて、聖人となるにふさわしいか慎重に審議されるそうです。
マザー・テレサもヨハネ・パウロ2世もいい人だと思うのですが、政治的な駆け引きや、つまらない俗世間の事情で「聖人」にされていなければいいなと思いました。
ノートルダム大聖堂
ノートルダム大聖堂の前は、入場待ちの観光客で長蛇の列でした。
私達は2011年の冬に内部を見学したため、今回は内部見学はパス。
ちなみに下の写真は、2011年の撮影です。
カトリックの大聖堂はどこもステンドグラスが美しく、荘厳な雰囲気でした。
ジャンヌ・ダルクの像もありました。
百年戦争の時に、神の啓示を受けてフランス軍に加わり、イングランドに勝利してフランス国王シャルル7世の戴冠に貢献したものの、捕虜となってイングランドに引き渡され、魔女として処刑された少女です。
彼女は、フランスを救った「オルレアンの少女」として今でもフランスを中心に大人気ですが、その彼女ですら、聖人となったのは死後500年近くたった1920年のことでした。
そういうことを考えれば、やっぱりヨハネ・パウロ2世やマザー・テレサは聖人になるのが早いかな。
大聖堂内部には、きらびやかな祭具の数々も展示されていました。
この大聖堂は、9,000人の人々を収容することができるようで、ナポレオンの戴冠式もここで行われました。
また最近では、2015年のパリ同時多発テロ事件の追悼ミサが行われ、大聖堂内部はもちろん、大聖堂前の広場にも、大勢のパリ市民が集まったようです。
今月(2017年6月)7日には、大聖堂前でハンマーを持った男に警官が襲われるという事件がありました。
その時には、大聖堂内部にいた多くの観光客が一時パニックになったとも聞いています。
フランスを代表する観光地(同じくテロがあったシャンゼリゼ通りもそうです)なので、テロの標的となったのでしょうが、イスラム教では「偉大な預言者」の1人として、イエスは敬意を払われているようです(「神の子」ではないとされています)。
イエスの母マリアについても、イスラム教徒は深い尊敬の念を抱いているということです。
イスラム教徒なら、そのマリアにささげられた教会であるノートルダム大聖堂の前で事件を起こすなんてありえないと思うのですが、果たしてどうなのでしょうか。
敬虔な祈りの場が、二度と凄惨な事件の場になりませんように。
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