秋の赤穂をレンタサイクルで巡る2 聖徳太子の側近・秦河勝を祀る大避神社

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2022年10月20日(木)、兵庫県赤穂市を訪れました。早朝の坂越(さこし)駅でレンタサイクルを借り、古い街並みや海などを見て回りました。

秋の赤穂をレンタサイクルで巡る1 朝の播州赤穂駅から坂越湾へ

2022年11月19日

坂越有数のパワースポット・大避神社

坂越の神社でもっとも有名なのは、大避(おおさけ)神社。

主祭神として、渡来人の秦河勝(はたのかわかつ)を祀っているという、珍しい神社です。

奈良時代初期にはすでに有力な神社だったとか。古くから信仰されている、大切な場所なのです。

訪れた時はまだ朝も早かったので、訪れる人もなく、鳥のさえずりが聞こえるだけ。空気がどこか違っていて、すがすがしい気持ちになれました。

今の社殿もとても立派で(江戸時代中期の再建)

拝殿には美しい天井画も!

圧巻は絵馬堂です。江戸時代以降の絵馬が、40余りも掲げられていました。

天然の良港・坂越でも、海上安全は重大関心事。

境内からは、生島や坂越の美しい海がよく見えました。御朱印も頂きたかったのですが、宮司さんが常駐していないのか、それとも単に訪問が早すぎたのか。とにかく御朱印は頂けませんでした。

主祭神の秦河勝について

日本が古墳時代だったころ、中国や朝鮮半島では、王朝の興亡や騎馬民族の侵攻などで戦争が相次ぎ、多くの人々が新天地を求め、日本(当時は「倭国」)に渡来してきました。

渡来系の代表的な氏族が秦(はた)氏。本拠地は京都の太秦(うずまさ)でした。

「秦の始皇帝の子孫」と自称し、土木・養蚕・機織りなどの最新技術を持っていた彼らは、やがて各地に土着して、地域の開拓や発展に寄与します。赤穂の東に位置する相生(あいおい)市でも、秦氏は開発を行っていました。

やがて厩戸皇子(聖徳太子)が活躍すると、族長の秦河勝は彼の側近となり、仏教を弾圧しようとする物部氏と闘ったり、太秦に広隆寺を建立するなど、皇子に大きな影響を与えたと言われます。

大避神社にあった案内板によると、皇子の死後、河勝は摂津国難波浦(大阪)から「うつぼ舟」に乗り、風に任せてこの坂越に漂着したと、能を大成した世阿弥が『風姿花伝』に記しました。

神社の縁起では、河勝は蘇我入鹿による圧迫などを避けるため、坂越に漂着。千種川の開拓を進めたのちに、80余歳で亡くなったとのこと。

坂越の沖合に浮かぶ生島には、河勝の墓とされる古墳があり、今も立ち入りは禁止されています。

毎年10月に行われる坂越の船祭は、河勝が坂越に渡来した伝承を再現する祭りとして始まったのだそうです。

大避神社や秦河勝をめぐる謎いろいろ

ところでこの神社や秦河勝に関して、不思議な点が多々あります。

まず、なぜ坂越に「漂着」したのか。計画的に来たわけでもなく、偶然たどり着いたというニュアンスが強いです。一体本当は、どこに行きたかったのか。それとも行く当てもなかったのか。

そして、秦河勝が乗ってきた「うつぼ舟」が気になる! 中身が空洞の船のことなのですが、丸木舟なのか、箱舟なのか(日本にもあった?) 最新技術を持っていたはずの秦氏の族長が、「丸木舟」というのも変な話です。

案内文にも書かれている世阿弥の原文では

摂津の国難波の浦より、うつほ舟に乗りて、風にまかせて西海に出づ。播磨の国坂越(しやくし)の浦に着く。浦人船を上げて見れば、かたち人間に変はれり。諸人に憑き祟りて奇瑞(きずい)をなす。すなはち、神と崇めて、国豊かなり。

つまり「うつぼ舟」は自力航行できず、漁師が船を引き上げて中を見た時には、姿は人間とは似ても似つかぬものに変化していた。つまり棺の中の遺体を見たような状況なのでしょうか。

それが多くの人々に憑き祟って色々と不思議なことが起こったので、神として祭ると、あたり一帯が豊かになったのだとか。

世阿弥によれば、河勝が千種川を開拓したとも、80余歳まで生きたとも書いていません。それどころか、最初は祟り神です。大荒(たいこう)大明神と名付けられました。墓を禁足地にしたのも、このような背景があったからなのでしょうか。

他の神名も気になります。神として祀られると、大避大神(おおさけのおおかみ)という名になりますが、その由来が気になりました。

蘇我入鹿による迫害という大きな禍を避けたから? 境界=境(さけ)の神? この辺りは(厳密にいうともう少し西)播磨と備前の国境だけれど、何か関係あるのかな?

秦河勝は怨霊となったとする『うつぼ舟Ⅰ 翁と河勝』(梅原猛)や

大避神社はネストリウス派キリスト教とかかわりがあるとする『兜率天の巡礼』(『ペルシアの幻術師』に収録 司馬遼太郎初期の小説)など、いろいろな本にも取り上げられていると知りました。

これらの本を読んでから大避神社に行くと、もっともっと歴史ロマンとミステリーを味わえたかもしれません。時間ができたら読んでみたいなと思いました。

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