知られざる紀伊半島の絶景を求めて4  偉大なる地母神の墓・花の窟神社(中編)

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女神の墓所・聖なる窪みは生命の根源

2024年7月4日(木)、紀伊半島に位置する三重県熊野市、和歌山県の新宮市と串本町を訪れました。

熊野市で熊野灘に向かって吠える獅子岩や、七里御浜を見ながら徒歩移動し、

知られざる紀伊半島の絶景を求めて2  熊野灘に吠える獅子岩と、2つのビーチ

2024年7月14日

伊弉諾尊(いざなぎのみこと)の妻で、日本の国土や森羅万象の神々を産んだ「母なる神」伊弉冉尊(いざなみのみこと)の墓と伝わる、花の窟(いわや)神社へ。

知られざる紀伊半島の絶景を求めて3  偉大なる地母神の墓・花の窟神社(前編)

2024年7月15日

ご神体の巨岩の、あまりの迫力にびっくりし

(高さ45mだそうです)

白石を敷き詰め、玉垣で囲まれた拝所の正面にある窪みを見て、更にびっくり! これはまさしく、女陰だと思いました。後で調べたところ、高さ6m、幅2.5m、深さ50cmほどの「ほと(女陰)穴」と呼ばれる窪みでした。ここが伊弉冉尊(いざなみのみこと)の墓所だそうです。

多分これが「花の窟」の「窟(いわや)」なのでしょうが、それにしては、奥行きが50cmしかないのが、少し違和感。「窟(いわや)」ってもっと洞窟っぽいところじゃないのかな?

「花の窟」という名前の由来は、伊弉冉尊を葬った際、近隣の住人たちが、季節の花を供えて伊弉冉尊を祭ったと記されていることによります。でもこの記事(『日本書紀』)の中には、「花」は出てくるけれど、「窟」は出てこない。「窟」に葬ったとは書かれていないのです。

伊弉冉尊は火の神・軻遇突智尊(かぐつちのみこと)を産んだとき、女陰を焼かれて亡くなります。多くの島々や神々を産んだ伊弉冉尊を象徴するのは、まさに「女陰」。すべての生命がここから誕生した、聖なる場所で母のシンボルでもあります。もしかしたら不思議な巨岩にこの窪みがあったため、ここが伊弉冉尊(いざなみのみこと)の墓所と伝わったのかもしれません。

余談ですが、学生時代に読んでいまでも印象が強い、半村良の『妖星伝』の中に、紀州(紀伊半島の奥地?)の地底生活に適応して地底人となった「赤目」が登場します。彼らのただ1人の母は、肥大化した子宮だけの肉塊で、命は不死に近く、声を発すれば泣くのみという姿。完全なSF伝奇小説なのですが、花の窟を見た時に、その記憶がよみがえってきました。母とは何かと考えた時、連想するのは昔も今も、あまり変わらないイメージなのでしょうか。

悲劇の火の神・軻遇突智尊の墓所も

このご神体(拝所)の向かいにも一回り小さい岩(それでも高さ約18m)があり、やはり拝所がありました。

これが、火の神・軻遇突智尊の墓所。彼を産むために、愛する妻の伊弉冉尊が亡くなったことに激怒した伊弉諾尊は、軻遇突智尊の首をはねて殺してしまいました。軻遇突智尊にしてみたら、ただ生まれてきただけなのに、その誕生自体が「罪」とされてしまう、かなり理不尽な話ではないのかな? ちょっとかわいそう。

伊弉諾尊の涙からも、首を斬られた軻遇突智尊の血からも、多くの神々が生まれたというから、とてもすさまじい話です。生と性と死が、混然と1つになっているような神話の舞台でした。

 

 

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