前回は、
- 「直虎」という署名がある文書は現在たった1通しか残されていないこと
- その文書は、井伊家が2年間実施を引き延ばしていたものの、今川からの圧力により実施せざるを得なかった徳政令だったこと
- 文書には「次郎直虎」の署名と花押(かおう)が記されていること
を紹介しました。
「次郎直虎」=「井伊直虎」=「次郎法師」?
通説では、この文書は井伊家の姫君である次郎法師が、
- 出家した女性の身ながら「直虎」という勇ましい男性の名前で署名をし
- 身分の高い男性のみが使用する花押という一種のサインも用いていたことを示すもの
として、「次郎法師」=「おんな城主直虎」説の根拠となっています。
確かに井伊谷に残る文書に花押を記すほど身分の高い人物と言えば、まず井伊谷を支配した井伊家の人物が候補に挙がります。
そして「次郎」とは、井伊本家の惣領に代々伝わる名前です。
この文書に記された年号は1568年(永禄11年)11月9日であり、この時期の井伊家の当主は誰かと考えると、まだ幼い虎松を後見していた次郎法師という女性が該当するのではないかというわけです。
- 日本中世史(特に戦国時代)専攻で、『おんな城主直虎』の他多くのNHK大河ドラマの時代考証を担当し、テレビ出演や関連著作も多い静岡大学名誉教授・小和田哲男さん
- 井伊家の菩提寺である龍潭寺(りょうたんじ 浜松市北区)の前住職で長年井伊家の研究を続けておられる武藤全裕さん
がこの説です。
井の国千年プロジェクト
井伊家の始祖(大河ドラマでは「ご初代さま」と呼ばれています)・井伊共保(ともやす)が赤子の時、井戸から発見されたというのが1010年(寛弘7年)。
それから千年経った2010年、龍潭寺周辺で「井の国千年祭」という催しが大々的に開かれました。
共催団体としては龍潭寺と共に「井の国歴史懇話会」という団体の名前もあり、古代からの奥浜名湖地域の歴史、特に井伊家の歴史が、千年祭を契機に改めて注目されたようです。
ひこにゃんもゲスト出演し、井伊谷と彦根の絆を深めてくれました。
「井の国千年祭」は、浜松市や浜松市教育委員会、各地域の観光協会、地元の鉄道、テレビ局や新聞社などが後援する大々的なものでした。
「井伊共保誕生の井戸」が立派に整備されたのも、この「井の国千年祭」の一環です。
奥浜名湖や井伊家の歴史に関する本も、この後出版されるようになりました。
直虎ゲームに登場!
余談ですが、井伊直虎が初めて戦国ゲームに登場したのは2012年9月の『戦国無双Chronicle2nd』からです。
「井の国千年祭」前後から、井伊家の歴史の中で次郎法師=井伊直虎が注目され、珍しい「女地頭」「女戦国武将」としてキャラクターに採用されたのでしょうか
『戦国無双』シリーズの井伊直虎はショートヘアの可愛い萌えキャラ。豊満なバストと脚線美、内向的な性格で、今でもかなりの人気のようです。
一方2014年、『戦国BASARA4』では、マントを羽織った凛々しい西洋風女騎士姿の井伊直虎が登場しました。
こちらもなかなか素敵です。
ともあれイベント、書籍、戦国ゲームなどで、井伊直虎というおんな城主が勇ましく戦い、井伊谷を守って井伊家発展の礎を築いたのだというイメージは広まり、大河ドラマ放映に至ったと思われます。
井伊博物館とは
ところが昨年12月、京都市東山区にある井伊美術館の館長・井伊達夫氏が、新しく発見された資料から井伊直虎は男性であり、次郎法師と呼ばれた井伊家の姫君とは別人だという説をマスコミに発表され、大河ドラマ放映直前のためもあってとても話題になりました。
この井伊美術館ですが、今まで余り聞いたこともなかったので、一体京都のどの辺りにあるのかなと、グーグルマップで調べてみました。
どうやら祇園や建仁寺の近くで、安井金比羅宮に隣接しておりアクセスも良さそうです。
でも地図を拡大していくと、「井伊美術館(旧中村甲刀修史館)」と書かれています。
どういうことか井伊博物館の公式サイトなどで調べてみると、面白いことが解りました。
井伊美術館の前身である「中村甲刀修史館」は、古美術商(甲冑を中心に扱っておられたようです)で歴史と武具の研究家である中村達夫(現・井伊達夫)氏が、甲冑を中心とするコレクションを展示するため1999年(平成11年)に開設しました。
でも入館料が大人1,500円もする!というのにまずびっくり。
京都国立博物館の海北友松特別展と同額です。
昨年春オープンしたばかりで大人気の京都鉄道博物館でも、大人1,200円です。
ちょっとこの料金設定はどうなんだろう。
「定休日がなく臨時休館することもあり、見学する場合は必ず事前に連絡を」とも書かれていました。
気軽にふらりと立ち寄れる場所でもなさそうで、未だに行っていません。
でも甲冑ファンにとっては面白い場所かも知れません。
次回もこの話題を続けます。
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