『カルメン』の世界 セビリアのたばこ工場と、ドン・ホセの真実

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兵庫県立芸術文化センターで、ブルガリア国立歌劇場の『カルメン』を見てきました。

今から約150年前(1875年)に初演された、誰もが知る名作オペラ。

ただ、全曲通して鑑賞することはあまりないので、今回面白い発見がいくつかありました。

セビリアのたばこ工場

カルメンの第一幕の舞台であり、カルメンの職場でもあるたばこ工場は、スペイン南部の中心・アンダルシア州の州都・セビリアにあります。

昼休みになると、カルメン達女工さんたちが、一斉に広場に出てきて、男性たちが言い寄ります。

ちなみに、この作品が書かれたのは、日本でいえば明治8年。

明治で女工さんといえば、富岡製糸場という待遇のいい工場もありましたが、『あゝ野麦峠』とか『女工哀史』など、長時間低賃金労働の悲惨なイメージもあって、昼休みの外出とか、男性からのお誘いとかあったのかな?

日本とスペインは、風土も文化も違うのですが、女工さんのイメージも、大分違いますね。

今なら書けない?たばこ賛歌

広場で待ち構える男性たちの歌によると、たばこ工場の女工さんたちは、たばこを吸っているようです。

昼休みで登場する女工さんたちの歌でも、たばこの煙がロマンチックに歌われています。

たばこの有害性や、受動喫煙の問題が大きくクローズアップされている現代には、あまりこういう趣旨の歌は作れないかもしれません。

ちなみに、カルメンたちが働いていたたばこ工場(旧セビリア王立たばこ工場)は、現在はセビリア大学のキャンパスになっています。

彼女たちはどんな作業をしていたのでしょう?

当時スペインでは、葉巻が流行していたようなので、たばこの葉を刻んだり、葉巻を巻いたりしていたのでしょうか。

「王立工場」ということから、たばこはスペイン政府の重要な財源であったこともわかります。専売制だったのかな?

女工さんの喧嘩

カルメンは工場の同僚と喧嘩騒ぎを起こし、衛兵に連行されてしまいます。

今回の舞台も、バレエで派手な喧嘩シーンを表現していました。

女工さんと言えば、『レ・ミゼラブル』でも、紡績工場でファンテーヌが、喧嘩騒ぎを起こしてクビになってしまいます。

日本では、大奥の女性たちの対立はよくドラマで描かれますが、明治の工場の女工さんの対立は、あまりドラマで見た記憶がありません。

日本の女工さんも、派手に喧嘩をしていたのでしょうか。

ドン・ホセの本当の性格

『トスカ』の原作には、オペラでは紹介されない主人公の経歴や背景などが書かれていますが、『カルメン』の原作にも、登場人物の複雑な背景が描かれています。

一番驚いたのは、ホセがバスク地方の出身で、故郷で喧嘩を吹っ掛けられ、相手を殺してしまったこと。

彼は故郷を飛び出しましたが、残された母親は、周囲からどう思われていたことか。

だからミカエラが「お母さまが、あなたを赦す」と歌っていたのです。

故郷を飛び出した彼は、マイノリティ故の苦労もあったでしょうが、セビリアでコツコツ真面目に努力して、母親を安心させようとしたのでしょう。

ところでオペラを見る限り、まじめで一本気で、カルメンに振り回されているようで気の毒な感じもするホセですが、カッとなると危ない人です。

オペラでは、短剣でエスカミーリオと決闘騒ぎを起こしますが、原作では、カルメンの愛人である犯罪集団のリーダー(ホセと出会ったときは服役中)も、殺しています。

一見優しくまじめそうだけれど、実は・・・(怖)。カルメンこそ災難でした。

カルメンはマルチリンガルだった!

原作によると、各地を放浪するロマ(ジプシー)のカルメンたちは、数か国語が話せるようです。

そのため、他の人々には難しいとされるバスク語も話せることができ、ホセもバスク語で話しかけてきたカルメンに惹かれたのだとか。

カルメンは、ホセがバスク出身だとわかったようです(訛りで?)。

それにしても、移動するにしても、密輸するにしても、マルチリンガルでないとやっていけないのでしょうね。

初めての生カルメン

劇場で『カルメン』を全曲見たのは初めてです。

今回のブルガリア国立歌劇場の演出はかなり斬新で、ギリシア悲劇のような仮面をつけた黒衣の群衆(まるで「カオナシ」!)の印象が強烈すぎでした。

3人の「運命の神」?も登場し、最初からかなり悲劇性が強調されて怖かった。

でも、カルメンが「嫌な女」になっていなかったので、ほっとしました。

最初は真剣に、ホセのことも好きだったし、ロマの女友達とも仲良くやっています。

カスタネットを使って、一生懸命ホセのために踊っていました。

でも不協和音が出ると気持ちは冷めるし、つきまとわれるのは死んでも嫌。

「そういう人なんだ」と、ホセがもっと彼女のことを理解してくれたらよかったのに。

エスカミーリオなら、あと腐れなく、きれいに別れてくれそうですが。

どちらも言い出したら聞かない、どうしようもない2人だったのでした。

余談ですが、カルメンの性格はとても猫に似ていると思います。

猫を愛する人なら、彼女の気持ちや行動は、わかるかもしれません。

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