『らんまん』主人公モデル牧野富太郎番外編 NHK『牧野富太郎の植物発見紀行』を見て感じたこと

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牧野富太郎の標本は美しい!

先日、偶然NHKのBSプレミアムで『牧野富太郎の植物発見紀行』という番組を見る機会がありました。

そこでは、牧野富太郎が作った植物標本を、世界最高水準のデジタルカメラ技術で「肖像写真」として撮影し、デジタルとアート2つの視点から読み解く高知県立牧野植物園の特別企画展示(菅原一剛「MAKINO植物の肖像」展 10月1日まで)が紹介されていたのですが、それを見て「植物標本って、こんなにきれいだったんだ」と初めて思いました。

実は私は、あまり牧野富太郎の植物標本を見ていません。練馬区立牧野記念庭園記念館で見たことはありますが

圧倒的に植物画の展示の方が多いのです(私もついついそちらばかり撮影していました)。でも植物標本も、富太郎が作るととても美しくなるらしい。植物を愛する人が作るのだから当然かなとも思うのですが、調べてみると、標本づくりはかなり大変なのだとわかりました。

植物標本の作り方

富太郎が植物標本をつくる手法は、簡単に言えば押し葉標本。正式には「腊葉(さくよう)標本」と呼ばれています。

きちんとした標本をつくるためには、A3サイズに収まるような、花や実のついている個体を選びます。小型の植物は根も含めた全体を、樹木の場合は枝の一部を採集します。

採集した個体を新聞紙に挟みますが、生えているときの姿を再現するように表現。根は泥を落とし(富太郎は水で洗ってました)、花は正面や横を向いた状態、葉は表も裏もこちらを向いた状態にしておくと、後で観察するときに便利だそうです。挟んだ新聞紙には、採集日時や採集地、種名、採集者名などのデータを記入。

屋内で再度標本の形を調整し、積み重ねた標本の上に板を置き、重しを乗せます。新聞紙は毎日交換し、これを標本が完全に乾燥するまで続けます(大体10日くらい)。

完全に乾燥すれば標本を台紙に貼り、新聞紙に記入しておいた必要データをラベルに記入して台紙に貼れば出来上がり。

手間と時間と保管場所が必要な植物標本はなぜ必要?

一見簡単そうですが、実はなかなか手間と時間がかかる大変な作業で、富太郎は採集旅行の後は徹夜で標本整理をすることもしばしばあったそうです。重しを乗せるところまではその日にやらねば!ということでしょうか。

時には富太郎の妻子も総出で手伝わされたようで、雨が続いて標本がなかなか乾きにくい時は、家の中の火のそばで乾燥させることもあったそうです。

ドラマでも描かれましたが、膨大な標本資料の保管場所も一苦労(写真の出典は『牧野富太郎と神戸』白岩卓己 のじぎく文庫)。

『らんまん』主人公モデル牧野富太郎ゆかりの地・神戸2  幻の「日本初の植物標本陳列所」

2023年9月19日

富太郎の生きた時代ならいざ知らず、これだけデジタル技術が発達した現代なら、植物標本をどんどんデジタル化して、新しい植物標本はもう不要ではと考えたりもしがちですが、そういうわけにはいきません。

実際の大きさや細かい形質、その種の地域や個体による変異を調べたり、DNAを抽出・分析したり、地域の自然環境を調べたりなどは、植物標本がないとできません。膨大な標本データの蓄積から、今まで1種と考えられていた植物が、地域ごとの隔たりが大きければ2種に分けられることもあります。

ドラマ『らんまん』で万太郎が孫に教えたように、必要であれば標本を水や湯に漬けると、元の形に戻るというのは知りませんでした(再び紙に挟んで乾燥させれば元に戻るそうです。便利!)。

やっぱり現在でも、富太郎や妻の壽衛子(すえこ)が夢見たハーバリウム(植物標本館)は必要だなと痛感しました。

『らんまん』主人公モデル牧野富太郎ゆかりの地・大泉  標本館と植物園を夢見た壽衛子

2023年9月25日
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