夢の浮橋ひろば
京阪電車宇治駅から下車し、宇治橋を渡って平等院に行くときに、絶対目にするもの。
それが紫式部の像です。紫式部は『源氏物語』の作者ですが、物語の後半は光源氏死後の話で、光源氏の子・薫(実は本当の父は源氏ではない)と光源氏の孫(母は明石の中宮)・匂宮(におうみや)が、宇治の姫君たちに恋する物語。そのため宇治には源氏物語に関する観光名所がたくさんあるのです。
この紫式部像が立つのは、「夢の浮橋ひろば」。「浮橋」とは、筏や舟を水上に浮かべ、その上に板を渡しただけの橋のことで、宇治橋のようにしっかりした橋ではなく、いつ流されてしまうかわからない橋のようです。宇治十帖の最後、『源氏物語』最後の巻の名は、はかない恋を象徴しているかのよう。
物語の解説もありました。
明治天皇の歌碑だそうです。
橋姫神社へ
宇治平等院の表参道とは別の道を行くと、『源氏物語』宇治十帖の最初の巻の名「橋姫」に関係ある
橋姫神社があります。「橋姫」という言葉にはいくつかのイメージがあり、『源氏物語』に登場する宇治の姫君たち(八宮の姫君・大君と中君姉妹)のように美しい橋の守護神である女神を指す場合もありますが、
嫉妬に苦しむ姫君が京都の貴船神社に願をかけ、そのお告げに従って宇治川に21日間浸かって生きたまま鬼となり、憎い女だけでなく、誰彼無しに人を殺すようになりました。これが「宇治の橋姫」と呼ばれる鬼女で、大江山の鬼退治で名高い源頼光の家臣(「四天王」)の1人・渡辺綱(わたなべのつな)に腕を斬られています。
橋姫神社に祀られているのは、瀬織津姫(せおりつひめ)という女神。宇治橋の守護神ですが、縁切りの神でもあり、悪縁を斬るご利益があるそうです。
逆に恋人同士や婚礼の際に、この神社の前を通ったり宇治橋を渡ったりするのはタブーなのだとか。
夫婦でこの神社を訪れて、夫婦で今までに宇治橋を何度もわたってしまいました(号泣)。まぁ「恋人同士」ではないからいいのかな。
和歌の橋姫は愛らしい女性
「橋姫の心をくみて高瀬さす 棹のしづくに袖ぞ濡れぬる」という薫の和歌が、『源氏物語』の「橋姫」の名の由来だそうです。
古今和歌集に登場する宇治の橋姫も、特に嫉妬に苦しんでいる女性というわけではなく、「はし」は「愛(は)し(=いとおしい、かわいらしい)」なので、「いとおしい女性」という意味でしょうか。
ちなみに源氏物語ミュージアムには、薫が有明の月の下で、合奏をする宇治の姫君たちを垣間見るシーンが再現されていました。ここから宇治の物語が始まるのですね。
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