宇治の橋姫伝説から発展した京都の魔界・鉄輪の井戸  

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パワーアップする伝説  安倍晴明が登場!

京都には縁結びの名所がたくさんありますが、縁切りの名所もそれなりにあります。

前回紹介した宇治の橋姫を祀る橋姫神社もその1つで、恋人同士や婚礼の際に、この神社の前を通ったり宇治橋を渡ったりするのはタブーだと知りました。川は色々な汚れを流すとされ、苦しみ、悪縁も消し去るとして信仰されてきたためでしょう。

宇治の橋姫にまつわる多くの伝説  『源氏物語』では美女、『源平盛衰記』では嫉妬に苦しむ鬼だった  

2023年10月2日

可憐な女性として描かれることもある宇治の橋姫ですが、嫉妬深い女神とされることもあり、そこから「嫉妬に悩む姫君が貴船神社に籠って鬼になることを願い、哀れに思った神に教わった方法で鬼になった」鬼女を橋姫と呼ぶことも多いのだとか。

この伝説は室町時代になると能の題材となり、『鉄輪(かなわ)』という演目となっています。姫君が鬼になる際、鉄輪=五徳(鉄の輪に三本足が付いた台)を逆さにして冠のように頭にかぶり、3本の足にそれぞれ松明を灯しました。

『鉄輪』では橋姫の腕を渡辺綱が斬るシーンはなく、橋姫に呪殺寸前だった夫婦が安倍晴明に助けを求め、晴明は夫婦の呪いを身代わりの人形で防ぎ(呪い代え)、橋姫は撃退されるというストーリー。渡辺綱はなぜ消えたのでしょう? 晴明の方が面白いからでしょうか。

あの野村萬斎さん主演の『陰陽師』でも、鬼になった祐姫(すけひめ)が、頭に鉄輪やろうそくを載せていたと思うのですが、そもそもなぜ鉄輪なんだろう? 単に頭に火を載せるためなのかな? それとも鉄輪という道具自体に何か、呪術的な力があるのかな?

路地の奥にひっそりとある鉄輪の井戸

ところでこの能『鉄輪』に登場する鬼女(橋姫)が、人間だったころに暮らしていたと伝わる場所が京都市下京区にあり、今でも井戸が残っています。

その名も「鉄輪の井戸」。時々(特に夏時分)テレビでも紹介されており、私たちもそれで存在を知りました。

知る人ぞ知る京都の観光名所(魔界スポット)で、入り口は細い路地の奥にあります。ちょっと入っていくのに、勇気がいりそうな細い道。いかにも異界への入口という感じですね(個人の敷地内を通るので、マナーには注意しましょう!)

やがて赤い鳥居があり

目指す井戸にたどり着きました。

一説には「鉄輪の女」(橋姫)が身投げをした井戸とも言われます。

現在は井戸に蓋がされていますが(実は水は枯れているらしい)、井戸水を汲んで相手に飲ませると、縁切りができるのだとか。別れたい相手に、さりげなく笑顔で飲ませてみたいですね。

昔から「縁切りの名所」と言われていましたが、それではよろしくないというわけで、江戸時代に「縁結びの神」として伏見稲荷から勧請された「命婦稲荷(みょうぶいなり)」が祀られていました。

ところでこの辺りは「鍛冶屋町(かじやまち)」という地名です。その名の通り鍛冶屋が集まっていた地域なのですが、ここにはかつて、鉄輪で築かれた塚があったのだとか。鉄輪を大量に製造する場所でもあったのでしょう。鉄輪の井戸も、それと何か関係があるのかもしれませんね。

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