旅の始まりは、蔦屋耕書堂跡から
2025年1月5日からスタートしたNHK大河ドラマ『べらぼう』は、主人公の蔦屋重三郎を中心に、江戸中期の様々な人物が登場します。昨年6月8日(土)に東京に行く機会があったので、ドラマに登場する人物ゆかりの地を巡ってみることにしました。
ただし、1日しかなかったので、移動距離や時間のことも考えて、中央区と江東区、台東区を中心に巡ることにしました。
最初に訪れたのは、東京駅から一番近い日本橋通油町(とおりあぶらちょう)にあった、蔦屋耕書堂跡。最寄り駅は地下鉄日比谷線小伝馬町駅ですが、私たちは東京駅から行く関係で、JR馬喰町(ばくろうちょう)駅から歩きました。どちらも大体、駅から5分くらいです。
蔦屋耕書堂は、吉原で生まれ育った重三郎が吉原で開いた書店。現在の出版社も兼ねています。最初は吉原の大門近くに店を構えましたが、次々とヒット作を出して大成功した重三郎は、吉原の書店を手代(てだい=中級使用人)に任せ、ここ日本橋通油町に進出しました(現在は、中央区日本橋大伝馬町13)。

残念ながら、今は看板しか残っていません。

この看板の周辺は、こんな感じなのですが

実はこの前の道は、旧日光街道。

ホテルが多いのは、そのためかな?
現代でも立地抜群の場所ですが、34歳の重三郎はこの場所にあった丸屋小兵衛の店舗を買い取り、本拠地にしました。7歳の時に生き別れとなった実の両親も呼び寄せ、一緒に生活したとか。

看板にあった浮世絵は、葛飾北斎が描く蔦屋耕書堂。ただしこれは、重三郎が亡くなった後の店です。重三郎夫妻には子供がなく、彼の死後は番頭が2代目となりました。蔦屋は4代目までは問屋として、5代目は明治初めまで本の小売りをし、その後廃業したようです。
名だたる書店が集まっていた日本橋界隈
蔦屋耕書堂が移転した通油町を含む日本橋界隈は、江戸経済を動かす豪商が多く集まる地域。
経済だけでなく、文化や情報の中心地でもあり、江戸の出版界の重鎮である書物問屋(上方=京・大坂で出版された本や専門書、学術書を扱う)や地本(じほん)問屋(江戸で出版される、大衆向けの本や浮世絵を扱う)も、数多く店を構えていました。

例えば、蔦屋耕書堂の向かい。東横イン日本橋馬喰町のある辺りには、蔦屋耕書堂に専属作家・山東京伝(さんとうきょうでん)を引き抜かれる(それでも一緒に旅をする)仙鶴堂鶴屋喜右衛門(演じるのは風間俊介さん)の店があり、
片岡愛之助さん演じる、鱗鶴堂鱗形(うろこがた)屋孫兵衛の店は、日本橋大伝馬町3丁目。
田沼意次の時代に『解体新書』を出版した書物問屋・申椒堂須原屋市兵衛(演じるのは里見浩太朗さん)は、日本橋室町2丁目に店を構えていました。
鱗形屋にしろ鶴屋、須原屋にしろ、先祖代々この場所で書店を経営している「世襲組」。その中で裸一貫、吉原から日本橋の出版界に乗り込んできた蔦屋重三郎は、まさに異色の存在。
吉原で奮闘する若き重三郎の活躍も面白いですが、大店(おおだな)の経営者となり、日本橋の老舗書店のお歴々と鎬を削ることになる、中年以降の重三郎もなかなか面白そうですね。
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