在原業平の歌碑
2025年2月9日(日)、同じ兵庫県にありながら、今まであまりよく知らなかった芦屋の名所旧跡を訪れる機会がありました。平安初期の歌人・在原業平(ありわらのなりひら)ゆかりの地や、芦屋神社を訪れたのですが
在原業平ゆかりの地名や史跡が、芦屋にはとても多いのです。
芦屋川沿いには、江戸時代の(大坂夏の陣の後)大坂城再建の際に使用された

石垣用の採石場があったりもするのですが
ひときわ目を引くのが、在原業平の歌碑。JR芦屋駅の近くにあります。

業平の歌の中でも有名な(でも百人一首の歌ではない)、『古今和歌集』の「世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」の歌が刻まれていました。この歌が詠まれたのは、大阪府枚方(ひらかた)市らしいのですが。

歌碑の側には「業平桜」が植えられていて、もし桜の時期に訪れていたら、美しい花が咲き乱れ、私の心は落ち着かなくなっていることでしょう。冬なので平常心でいられました。
業平町と業平橋
JR芦屋駅近くには歌碑の他、その名も「業平町」という地名がありました。

「業平町」の南側には、「公光(きんみつ)町」もあります。先ほど訪れた祠の祭神(謡曲『雲林院』(うんりんいん)の登場人物)の名が、そのまま町名にもなっていました。上の写真の地図は、左が北です。

このような地名が付いた理由として、江戸時代に、在原業平の別荘が芦屋川の左岸にあったのではとされ、そのため「業平町」という地名も生まれたのでしょう。

地名だけでなく、芦屋川に架かる橋にも「業平橋」があります。

東京都墨田区の業平橋(東京スカイツリーの近く)が有名ですが、

兵庫県の芦屋にある業平橋も、土木学会選奨遺産に認定されたすごい橋。

1925(大正14)年に完成しました。
国道2号線にある「業平橋」から上流の芦屋川両岸道路には「業平さくら通り」、「業平橋」から下流の両岸道路には「芦屋川松風通り」の愛称が付けられています。

そして「業平橋」の1本下流の橋は、「公光橋」。

こちらは橋の欄干の色も特に目立たず、「業平橋」よりは控えめな印象でした。

2つの橋の間には、カトリック芦屋教会の尖塔もあります。
『伊勢物語』に登場する芦屋
在原業平が主人公のモデルとされる『伊勢物語』の第87段には、摂津国菟原(うばら)郡芦屋の里に主人公の所領があったと書かれています。

しがない宮仕えをしていた主人公の別荘には、兄や友人たちも遊びに来て、芦屋の海や六甲山にある布引(ぬのびき)の滝を遊覧したとのこと。山があり海があり、風光明媚なイメージですね。上の写真は「芦屋川松風通り」の松林。平安時代の芦屋の浜は、こんな感じだったのでしょうか。

1,000年以上前に書かれた『伊勢物語』に登場したことでブランドイメージが高まり、地名にも大きな影響を受けた芦屋市。さらに海岸沿いに進めば、『伊勢物語』に因むと思われる「伊勢町」の地名もあり、やはり『伊勢物語』と芦屋の関係は深いなと思いました。
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