南北朝鮮文壇の現場をこの目で見たいと、烏頭山(オドゥサン)統一展望台や板門店、非武装中立地帯(DMZ)を訪れました。
南侵第3トンネル内部を見学した後訪れたのは、都羅(トラ)展望台。
第3トンネルが発見されたのと同じ京畿道(キョンギド)・坡州(パジュ)市にあります。
展望台からきれいな写真が撮れない理由
板門店には韓国人は立ち入ることができませんが、ここは許可されているため、多くの韓国人団体旅行客でにぎわっていました。
さて肝心の展望ですが、今日も昨日同様、展望台からの眺めはよくありません。
おまけにここでは、展望台建物内からの撮影は禁止されているのです。
建物の外の地面には黄色い線が引かれ、それより外で写真撮影することもできません。
見晴らしがいいので(天気が良ければ)きれいな写真が撮れそうですが、塀から2m以上離れた場所からしか、撮影は許可されませんでした。
一体どうしてなのか、その理由は未だによくわかりません。
地雷原は自然の宝庫
展望台近くの樹木には、鳥の巣が多いことに気が付きました。
昨日もガイドさんから聞きましたが、非武装地帯は一面に地雷が埋められているため、半世紀以上にもわたって、人間が立ち入ることはできませんでした。
すると皮肉なことに、非武装地帯は自然環境が豊かな、渡り鳥の楽園となっているのです。
人間にとっては恐ろしい土地が、野生の楽園となるなんて。
「国破れて山河在り」という唐の詩人・杜甫(とほ)の名作が、ふと頭をよぎりました。
国家同士の争いはまだ終わっていないのに、自然の方はもうすっかり回復して、人間よりも数段上なのだと感じました。
大陸横断鉄道だった京義(キョンイ)線
続いて訪れたのは、京畿道・坡州市の韓国鉄道公社・京義線の都羅山(トラサン)駅。
1902年(明治35年)、日本によって建設が開始された鉄道が、京義線の起源です。
韓国は独立国でしたが、日本とロシアが韓国を巡って争っており、この年日本は、ロシアと対立していたイギリスと同盟を結びました。
いわゆる「日英同盟」です。
日露戦争になれば、大陸での物資補給が必要になると考えた日本は、京城(現ソウル)と中国との国境・新義州を、突貫工事で結びました。
そして京城の「京」と新義州の「義」を取って、京義線と名づけられました。
やがては南満州鉄道やシベリア鉄道と結ばれ、大陸横断鉄道の起点ともなった鉄道です。
しかし1945年(昭和20年)、第二次世界大戦で日本が敗北すると、朝鮮半島はアメリカとソ連によって南北分割占領され、京義線も北緯38度線を境にして分断。
朝鮮戦争が始まると、軍事境界線を越えて列車が運行するのは不可能になりました。
特に韓国側の場合、ソウル以外に沿線に大都市もなく、46kmという短さのため、いつしか幹線ではなくローカル線扱いに。
一方北朝鮮側では、引き続き幹線として活躍したようです。
その京義線が注目されたのが、2000年(平成12年)。
この年行われた南北首脳会談後、南北分断路線となった京義線の再連結が合意され、2002年(平成14年)から連結工事が行われたのです。
いつか列車が走る駅
さてこの都羅山駅ですが、民間人統制区域内にあるため、気軽に訪れることはできません。
この駅は最近建てられた、とても新しく近代的な駅なのですが、観光客の他には乗客がいないので、奇妙な感じがしました。
2002年、韓国の金大中大統領とアメリカジョージ・ブッシュ大統領がこの場所を訪問しました。
その時の大統領2人のサインも見ることができました。
いつかここから再び、ユーラシア大陸を横断する列車が出発するのでしょうか。
その時はぜひ乗ってみたいなと思いました。
「自由の村」に住んでみたい?
バスツアーで絶対訪れる場所として、「土産物屋」があります。
私達もツアーの最後に、土産物屋に連れていかれました。
でも普通の土産物屋ではなく、民間人統制区域にある唯一の村「自由の村」の土産物屋です。
ここに住んでいるのは、朝鮮半島の休戦当時の住民の直系の子孫のみで、多くが農業を営んでいるそうです。
この村の住人の最大の特徴は、徴兵と納税の義務が免除されるということ。
そのため所得は、韓国の平均的な農家よりも高いとか。
しかしこんな制約もあるのです。
- 年間8カ月以上は村に居住しないといけない。
- 毎日世帯ごとに人員チェックがあって夜間(0時~5時)は外出禁止。
- 農作業の場合は,2~3日前に活動時間を軍に申告(軍事境界線近くの場合は、農作業に軍が同行)。
- 土地の所有権は認められない(売買は不可)。
- 許可された人や指定された観光ツアー参加者しか村に入れない。
もちろん、軍事衝突があれば真っ先に被害を受ける可能性が高く、現在も地雷のために被害を受ける住民もいるとか。
東西ドイツが統一できたように、いつか南北朝鮮が統一され、「自由の村」が「普通の村」になることがあるのかな。
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