懐かしい『荒神』がNHKに登場!
以前朝日新聞朝刊に連載されていた、宮部みゆきさんの『荒神』を、毎日楽しみに読んでいました。
怪物が出てきて、人がたくさん死ぬ怖ろしいシーンもあったのですが、挿絵がとてもふんわり味があって、後で『この世界の片隅に』の作者・こうの史代さんが描かれたものだと知りました。
その懐かしい『荒神』が、NHKスーパープレミアムスペシャルドラマになりました。
原作者・宮部みゆきが語るドラマ版「荒神」(NHK_PRサイトより)
予告編を見たら「うわっ!変形前のシン・ゴジラ?!」というくらい気持ち悪い化け物で、人間が食べられたり踏みつぶされたりするんだけれど、映像的に大丈夫かなと心配でした。
【スペシャルドラマ「荒神」BSプレミアムで放送!】
宮部みゆき原作。
突如あらわれた怪物。一体何ものなのか。どうすれば倒せるのか?
テレビドラマの限界に挑んだ大スペクタクル。2/17(土) 夜9時~ pic.twitter.com/nBUam9el00
— NHKドラマ (@nhk_dramas) 2018年2月11日
ところですっかり忘れていたのですが、この怪物の名前って「荒神」ではなく「つちみかどさま」っていうんですね。
「つちみかどさま」と土御門家 偶然の一致?
ドラマでは(原作ではどうだったか忘れました)、土くれから呪いの力で生み出された「つちみかどさま」。
「つちみかどさま」を生み出したのは、呪術を使う瓜生(うりゅう)一族だと語られていました。
この一族が何者なのか、ドラマでは全然語られていないのですが、もしかしたら土御門(つちみかど)家の末裔ということも考えられないでしょうか。
この土御門家には3つの流れがあり、1つは村上源氏系統(鎌倉初期に権勢をふるいましたが、室町時代に断絶)、もう1つは藤原北家系統(室町時代に活躍しましたが断絶)、そして最後が室町時代の陰陽師(おんみょうじ)安倍有世(ありよ)の末裔です。
陰陽師とは易学・天文学・暦学・呪術などをつかさどる技術系の官僚で、夢枕獏さんの小説『陰陽師』で描かれた安倍晴明があまりにも有名ですね。
これを映画化した『陰陽師』の曲を、羽生結弦選手が昨日平昌五輪男子フィギュアスケートフリーの演技で使用し、見事金メダルを取ったのでした(拍手!)。
500RT:【羽生まつり】羽生結弦と羽生善治竜王の報道入り乱れネット大混乱https://t.co/q4hpBXtfrr
Yahoo!検索ランキングには「羽生」「羽生くん」「羽生選手」「羽生さん」「羽生竜王」などランクイン。大混乱を生み話… pic.twitter.com/EOayj4gwAq
— ライブドアニュース (@livedoornews) 2018年2月17日
羽生結弦選手の『陰陽師』の演技(もちろん録画)が流れる裏番組に、安倍晴明の一族にゆかりのありそうな物語が放映されるなんて、なんというタイミングの良さ!
平岳大さん、男子フィギュアと視聴率を争うことになるのを心配しておられたのでしょうか。
本当にしつこくてすいません。宣伝です。 https://t.co/PZyN8pylVe
— 平 岳大 (@hira_takehiro) 2018年2月17日
どうしてこの日に安倍晴明を連想させる「つちみかどさま」を放映するんだろう? まさかNHK、狙ってる?
実は夢枕獏さんの代表作『陰陽師』シリーズの小説はまだ読んだことがないのですが、『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』はとても面白いし、映画との比較なども書いてみましたので、よろしければご覧ください。
安倍晴明よりもすごかった? 子孫の有世は大出世!
安倍晴明はカリスマ的な人気を後々まで残しますが、官位は従四位下(じゅしいのげ)で播磨守(はりまのかみ)など、地方長官が中心。つまり都道府県知事レベルでした。
その安倍晴明14代目の子孫・安倍有世は、従二位非参議刑部卿(ぎょうぶきょう)という、陰陽師としては破格の出世をします。
従三位(じゅさんみ)非参議以上の公家は、太政官(だじょうかん)の最高幹部となって「公卿(くぎょう)」と呼ばれ、国政を担当。
現代でいえば、内閣のメンバーに当たるでしょうか。
有世が生きた時代、安倍晴明の子孫たちはいくつかの家系に分裂して「宗家」争いをしていました。
有世は早くから陰陽道で才能を発揮し、公務を行いながら自分の才能に磨きをかけ、ほかの一族との争いに明け暮れましたが、室町幕府3代将軍足利義満に祈祷を行ったところ効果があったということで、足利義満の信頼を得るようになりました。
有世の出世で安倍氏の宗家争いは決着がつき、有世の子孫たちは他の一族と区別するためもあり、父子相伝の家屋敷のある地名を取って「土御門家」を名乗ります。
氏名(うじな)と家名(かめい)
古代日本の支配層は氏と呼ばれる一族集団によって構成されてそれぞれが姓を有していましたが、この時代の姓は氏名(うじな=氏の名称)を意味していました。
特に源氏・平氏・藤原氏・橘氏の4つの姓を持った氏が代表的な貴族として知られていました(源平藤橘)。
特徴は「みなもとの」「たいらの」「ふじわらの」「たちばなの」など、すべて「の」の字が名前との間につくこと。
源頼朝(みなもとのよりとも)、平清盛(たいらのきよもり)など、皆そうです。
ところが平安時代末期、1156年の保元の乱で一族が敵味方に分かれてしまうという事態になり、その後も相続争いや勢力争いなどが起こります。
一族が増え続けると、土着した土地や邸宅が父子相伝となり、ほかの一族と自分の家系とを区別するために、氏名(うじな)ではなく家名(かめい)を名乗る例が増えました。
たとえば藤原氏一族の近衛家、九条家、源氏一族である足利家や新田家などが「家名」になります。
家名を名乗ると、九条兼実(くじょうかねざね)、足利尊氏(あしかがたかうじ)、織田信長(おだのぶなが)のように、「の」の字がつきません。
ちなみに秀吉が後陽成天皇から賜った「豊臣」は姓(氏名)であるため、『真田丸』で小日向文世さんが「関白、豊臣秀吉(とよとみのひでよし)である」と名乗り、話題になりました。
これが正しい読み方なのですが、いつ一般に普及するのかな。
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