幕末を駆け抜けた土方歳三の魅力を探る2(NHK『英雄たちの選択』より)

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先日、NHKで放映された『英雄たちの選択「土方歳三”明治”に死す 盟友・近藤勇の生死を握る決断」』の再放送を、偶然見る機会がありました。

新選組の副長・土方歳三さんが、箱館五稜郭戦争で戦死した命日(5月11日)にちなんで、最近再放送されたようでした(本放送は2017年12月7日)。

前回は、不可能とも思える夢でも自分に制限をつけずに挑戦し、努力を続けて見事に夢をかなえた土方さんの魅力について紹介しました。

幕末を駆け抜けた土方歳三の魅力を探る1(NHK『英雄たちの選択』より)

2018年5月16日

今回のテーマは、彼の「合理主義」と「行動力」です。

勝つためには何をすべきか

盟友の近藤勇が、天然理心流宗家四代目を襲名したのに対し、土方さんは「中極意目録」までしか取れていません。

これは全部で6段階ある天然理心流の、下から3番目(上から4番目)。

剣の腕が弱かったからではなく、家業の「石田散薬」行商時代に学んだ様々な流派の癖が抜けず、正当な技術を会得できなかったためでした。

しかしその分、実際の戦闘ではめっぽう強かったそうです。

様々な剣の技術を繰り出すだけでなく、勝つためにはおよそ武士らしくないこと(相手に砂をかける、首を絞めるなど)もして、どんな修羅場でも勝ち残りました。

新選組の竹刀打ち込み稽古でも、近藤勇や芹沢鴨は高いところに座って見ていることが多かったのに、土方さんはいつも胴を着けて汗を流しながら指導していたそうです。

彼が愛用した刀の「大和守源秀國」が番組で紹介されていましたが、これも実戦に向いている、「ブランド刀」ではない実用品でした。

新選組の戦闘スタイルも勝つことが目的だから、ほとんどの戦闘は敵よりも多い人数で臨み、集団で取り囲んで襲撃するものがほとんどでした(池田屋事件は例外なんですね)。

新選組の目的とは何か

特定の主君に仕えることを生まれた時から定められている武士と異なり、新選組に入隊した隊士たちは、主君を持たない浪士や農民、町人出身の若者たちでした。

彼らに求められたのは、「剣で京の治安を守ること」。

番組の司会者・磯田道史さんは、「警備保障会社」と表現しておられました。

彼らはこの目的のために志願して入隊したのですから、入隊後は身分も経歴も関係のない、実力主義。

池田屋事件の報奨金は、隊士たちの刀の刃こぼれや返り血などを厳しくチェックし、5段階で支払われたといいます。

一般の武士なら「ダサい」「カッコ悪い」と感じたはずの、あの揃いの羽織(有名な浅黄色のダンダラ羽織は、歌舞伎の『忠臣蔵』を模したもの)も、皆で1つの目的を追い求めるための「ユニフォーム」「制服」として取り入れました。

また、新選組の目的から外れたとされた隊士たちは「局中法度」により粛清され、それは平隊士だけでなく、上級幹部にも容赦なく適用されました。

この厳しい隊規を考案したのが土方さんで、「鬼の副長」と呼ばれ、裏切者やはみ出し者には容赦しませんでした。

これも「新選組」という組織を愛し、強い組織に育てたかった土方さんが、組織のために敢えて憎まれ役を引き受けて粛清の刃を振るったのでしょう。

素早い決断力と、ずば抜けた実行力

土方さんといえば洋装の写真があまりにも有名ですが、これは鳥羽伏見の戦いで敗北したのち、「もう刀や槍の時代じゃない」と新選組を西洋式軍隊として再編成した時のもの。

今までのものを思い切って捨てる、そして新しいものを取り入れるというのは、なかなか簡単にできるものではありません。

でも「勝つために必要だ」と思えば、即決断。そして実行。

『英雄たちの選択』で一番感動したのが、西本願寺の屯所に幕府の蘭方医・松本良順が視察に来た時の話でした。

集団生活の若者たちがどんどん病気になっていく、不衛生で不養生な環境に、松本良順は驚きました。

病人は全部集めて病室を作る、風呂にも入れるなど、屯所を一通り土方さんと見回って、戻ってみたら、もう全部指示が実行されていた、という話です。

きっと歩きながら、周囲の部下に次々と指示を飛ばしていったのでしょう。

このフットワークの軽さ、感動ものです!

土方さんに見る「デキるビジネスパーソン」

豪農の家に生まれた土方さんは、幼いころから薬づくりや農作業など「人を動かす」場面を見て育ったため、組織作りの天才だったというのは、よく言われます。

組織を動かす「辣腕マネージャー」として、素晴らしい才能を発揮した土方さんですが、彼の実行力もすごいなと思いました。

「病室があったらいいな」「鉄砲を導入すれば?」「洋装の方が戦いやすいかも」とアイディアが浮かんでも、面倒だな、失敗したらどうしようと考えると、普通は逡巡してしまってなかなか動きにくいもの。

でも彼は、すぐに決断し、行動し、目的に向かってまっしぐらなのです。

これが積み重なっていけば、彼の目的(新選組を強い組織にする)が、かなり短期間で達成されるのも、ある意味当然のことでした。

彼がもし現代に生まれていれば、きっとデキるビジネスパーソンとして(ベンチャー企業のカリスマ経営者?)、脚光を浴びていることでしょう。

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