先日、川西市のみつなかホールで『トスカ』を見てきました。
『トスカ』を全曲見たのはこれで2回目ですが、時代背景やセリフの中に、世界史的な要素があって、前々から気になっていたのです。
登場人物の詳細プロフィール入手!
ありがたいことに、今回配布されたプログラムの中に、主要登場人物の紹介が、詳しく書かれていました(それでも最大4行)。
例えば私の大好きなスカルピアさんは、シチリア出身で、この物語(1800年6月17日)の1週間前にローマに派遣されたとあります(要するに栄転?)。
どこかでそんな話題が出るのかなと、セリフや歌詞に注意を払いましたが、全く出てきません。
それなのに、人物設定がきっちり用意されている。スカルピアさんがシチリア生まれだろうが、栄転直後だろうが、ストーリーには関係ないのに。どうしてかな? とても気になりました。
そういえば、『トスカ』には原作があったはず! 確かフランスの大女優・サラ・ベルナールが演じたと、プログラムのほかのページに書いてありました。
そこで、ヴィクトリアン・サルドゥーの原作を調べてみると、彼ら主要人物のプロフィールが設定されていたのです。
信心深い歌姫トスカ
嫉妬深いけれど信心深い、ピュアなトスカは捨て子だそうです。
捨て子だから愛情に飢えていて、嫉妬深いのだとか。
ヴェローナの僧侶に拾われ、修道院で育てられ、音楽の才能を発揮して、16歳で地元のスター歌手に。
彼女の所属を巡って、イタリアが二分するほどの騒ぎになり、ローマ法王も彼女の歌に感動するという、伝説の歌姫です。
安室奈美恵さん並み? 昭和なら美空ひばりさんクラス。
ともかく彼女は、修道院育ちなので信心深い。あと大事な点。それは彼女がドラマの時点で20歳(もしくは19歳)ということです。
なんとなく、カヴァラドッシよりもしっかりしている姉さん女房だと思っていたのですが、その点はどうなのかな?
イタリアを代表する歌姫なので、次のシーズンは、ヴェネツィアでの契約があるそうです。忙しそう!
スカルピアを殺した後、丁寧に彼の死体に接して祈りを捧げ、十字架やろうそくを置いていたのが印象的でした。
啓蒙主義者・カヴァラドッシ
トスカの恋人、マリオ・カヴァラドッシは、ローマの名門貴族出身なので、オペラでは「騎士どの」とも呼ばれています。
父親は、啓蒙主義者のようです。超自然的な偏見(迷信)を取り払い、人間の理性を重視する立場でした。
父親は若いころからパリに住み、マリオの母親はパリの人。マリオもパリで生まれ育ち、フランス革命の影響をたっぷり受けた「自由主義者」。
加えて父親譲りの啓蒙思想家ででもあったのでしょうか。
聖アンドレア・デッラ・ヴァッレ教会の堂守からは、「ヴォルテールの犬」と陰口をたたかれています。
カトリックの信仰と、理性や自由を重視するヴォルテール派とは対立しており、ローマでは、彼は危険人物の1人なのです。
そしてフランス革命やナポレオンは、教会やローマ法王を痛めつけているため、ナポレオン敗戦の知らせを聞くと、教会関係者は大喜びし、あの『テ・デウム』となるわけです。
あの儀式の場には、ミケランジェロデザインの制服を着用した、スイス衛兵も登場。ということは、最後に出てきた高位の聖職者が、ローマ法王だったのですね。
ローマ法王がオペラに登場するなんて、よく考えたらすごい!
革命思想と絶対王政が対立するローマ
原作では、マリオは絵を歴史画で有名なダヴィッドのアトリエで学び、絵の修行でローマを訪れました。
彼がローマを訪れた時には、ローマはフランス軍の占領下にあり、自由主義者の彼には何の問題もなかったのですが、このドラマの時期(1800年6月17日)には、フランス軍は撤退しており、ナポレオンに反発するナポリ王国がローマを支配していました。
自由主義者の彼には、今のローマはとても危険。
それなのに彼は、貴族の一員というのに、貴族らしい服装・髪型をせず、かなり目立っています。ちょっと隙がありすぎかも。
彼とトスカは、劇場でひとめぼれしたそうです。
今シーズンはローマで歌うトスカと一緒にいたいため、彼は聖アンドレア・デッラ・ヴァッレ教会に無償で絵を描いているのだとか。
道理で絵が上手だし、道理であまり真剣に描いていなさそうなのもわかりました。絵が出来上がったら、ローマにいる理由がなくなりそうだから、かな?
オペラでは、脱獄したアンジェロッティとは友人という設定ですが、原作では初対面だそうです。
まぁ初対面でも、自由を愛するカヴァラドッシなら助けそうです。
命懸けでアンジェロッティを匿ったり、ナポレオンがマレンゴの戦いで勝利したと知ると、スカルピアを挑発したりと、ちょっと見ていて危なっかしい。
結婚したら、絶対トスカに主導権を握られるタイプかも。
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