『トスカ』の時代 1800年のローマと登場人物2

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先日、川西市のみつなかホールで『トスカ』を見てきました。

そこでいただいたプログラムに、登場人物の細かい(オペラを見ているだけではわからない)人物設定が書いてあり、『トスカ』の原作の存在に気が付いたのです。

ローマの警視総監は忙しい

低音ボイスが昔から好きだし、『トスカ』ではだれがどう見ても、青年画家カヴァラドッシより、スカルピア男爵がかっこいいでしょう!と思っています。

彼は、泣く子も黙るローマの警視総監。治安維持のトップです。

平和な現代のローマでも、観光客を狙ったスリ(私たちも狙われたことがあります)が多いようで、さぞ警察も忙しいと思うのですが、『トスカ』の時代は別の意味で大変でした。

当時連戦連勝だったナポレオンが、北イタリアを占領。ローマにも進軍し、教皇領全体の占領を狙います。

教皇支配に反発するローマ市民はナポレオンを支持し、1798年「ローマ共和国」の成立を宣言。教皇ピウス6世は亡命を余儀なくされます。

しかしその後、ナポレオンは帰国したり、他国に進撃したりして、イタリア支配を続けることができなくなりました。

このチャンスに、反ナポレオンのオーストリア軍がイタリア諸都市を取り戻し、ローマはオーストリア軍と関係の深いナポリ王国が占領し、治安維持を担当。

ローマ教皇の支配も復活しました。

政治犯の逮捕や裁判・処刑などで、ローマの警視総監は多忙だったことでしょう。

トスカの歌を聞いた「王妃さま」とは

ローマの治安維持を担当するナポリ王国の王妃は、オーストリアから嫁いできたマリア・テレジアの娘、マリア・カロリーナ(マリー・アントワネットのすぐ上の姉)。

オペラでは、直接登場はしませんが、トスカが「王妃さまの戦勝祝賀会」で歌うことは、トスカのセリフで紹介されています。

王妃にすれば、フランス革命もナポレオンも、彼を支持する勢力も、妹とその家族を殺した憎い敵でした。

オペラでは、トスカが「王妃に嘆願して、(カヴァラドッシを)赦免してもらう」と言っていましたが、トスカの歌に感動していても、ローマ共和国総督の脱走を助けたナポレオン支持者の命を助けてくれるでしょうか。

王妃から与えられたノルマ

スカルピア男爵は、原作によるとナポリ王国の刑事として出世。ナポリからローマに警視総監として赴任しました。

その栄転の1週間後、政治犯アンジェロッティが脱走。

ローマにいる王妃マリア・カロリーナから、スカルピア男爵は叱責を受けました。

早くアンジェロッティを逮捕しないと、責任を取って彼は罷免されるどころか、命も危ないというのが、原作の設定らしいです。

スカルピア男爵が恐れる女性たち

オペラのスカルピア男爵は、怖いものなし。

ファルネーゼ宮殿(現在のフランス大使館)で豪華な晩餐を取り、気に入った女性はどんな汚い手段を使ってでも手に入れる。ワインも好きそうです。

頭がよくて紳士的で、押しが強いサディストですが、とても魅力的な人です。

ところが原作では、王妃の命令に焦ってしまい、何としてでもアンジェロッティを逮捕しなければと必死のようです。カヴァラドッシの拷問にも、力が入るのがわかります。

このような状況では、王妃が一番、トスカは二番でしょう。とても「神を忘れる」なんて歌っている場合じゃない。

さらにスカルピア男爵には、もう一人、怖い女性がいたらしいのです。

それが、オペラでは全く言及されない、アンジェロッティの元カノ、ハミルトンイギリス公使夫人です。

結婚前の関係をアンジェロッティに暴露され、侮辱されてしまった夫人は、絶対彼を殺そうと、スカルピア男爵に圧力をかけていたとか。

スカルピア男爵は、王妃よりもハミルトン夫人の方が怖いみたいでした。

オペラではあんなに凄みのあるスカルピア男爵に、さらに輪をかけて怖い人がいたとは(しかも女性!)

もし原作通りに、オペラに彼女たちが2人とも登場していたら、スカルピア男爵の悪魔的な魅力は、かなり弱まってしまうでしょう。

やっぱりオペラのストーリーが、原作よりもドラマチックでいいですね。

ちなみに、第一幕の舞台・聖アンドレアデッラヴァッレ教会、第二幕の舞台・ファルネーゼ宮殿、そして第三幕の舞台・サンタンジェロ城の位置関係はこんな感じ。意外と近そうです。

サンタンジェロ城には少しだけ立ち寄ったことがあるのですが、いつかこの3つの舞台を訪れてみたいなと思いました。

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