六道珍皇寺は、建仁寺の塔頭だった
2019年9月22日(日)、阪急河原町駅から、六道珍皇寺へ向かいました。
途中、団栗橋や建仁寺境内を通り、道に迷ったりしながら六道珍皇寺へ。
六道珍皇寺って、建仁寺の塔頭(たっちゅう 禅宗の大寺院に寄り添って建つ小堂)だったのですね。だからこんなに近いのか。
でも平安時代の貴族・小野篁(おののたかむら)のゆかりの寺院だから、平安時代創建だろうし、その時には臨済宗は伝来していないはず。
どうしてかな?と思って調べたら、元々真言宗だったけれど一時荒廃し、建仁寺の住持によって再興され、その時に臨済宗に改めて建仁寺の塔頭になったのでした。
ところでグーグルマップだと、「六道珍皇寺の北側(裏)から本堂へ」と表示されますが、門は南側(松原通)です。
そのためかなり遠回りをしました。グーグルマップを過信するのも考えものかな。
小野篁卿とご対面!
さて、私たちのお目当ては、六道珍皇寺の秋季寺宝展。
以前も(2012年7月)六道珍皇寺に行ったことがあるのですが、お堂が閉じられていました。
だから仏像も、小野篁の像も見たことがありません。
小野篁冥府通いの井戸は、塀から必死に覗いていました(そして蚊に噛まれる!)。
ところが今日は、閉じられていた閻魔堂(篁堂)の扉が開かれ、小野篁像とご対面できました。
彼は法律に明るい有能な官僚で、多分地獄の閻魔様の助手もお手の物。でも24時間働いて、一体いつ寝ていたのかな? 彼は、漢詩や和歌、書にも巧みなスーパーエリートで文武両道だから(身長188cm!)、体力もあるのかな。
小野篁像は元禄時代の作ですが、この閻魔様(大きい方)は、小野篁の作なのだとか。彫刻もなかなかお上手です。
ちなみに服装からもわかる通り、閻魔大王を頂点とする地獄の官僚(裁判官)制度は、インドのものではなく中国の思想です。
律令制度などと一緒に、中国から渡ってきたのかな?
絵画で知る六道巡り 地獄の図
本堂では、ご本尊の薬師如来坐像や、室町時代の作とされる地蔵菩薩坐像の他、桃山時代に描かれた「参詣曼荼羅図」(京都府指定文化財)、江戸時代初期の「熊野観心十界図」など、様々な絵画も展示されていました。残念ながら撮影は禁止。
この辺りは平安京の火葬地であった鳥辺野の入口にあたり、現世と他界の境にあたると考えられ、「六道の辻」と呼ばれています。
「六道」とは、生きとし生けるもの(人間以外も含む)が生前の所業によって輪廻転生する6つの世界(天道・人道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道)。
天道なら最高!と思いがちですが、天人にも煩悩はあるし(そういえば羽衣伝説の天女は苦悩していました)、悟っていないので苦しみはあるそうです。寿命は長いけど、いつかは死にます。
平安時代に浄土教や末法思想が流行し、『往生要集』で地獄の恐ろしさが説かれると、地獄図の製作や、地獄の刑罰から逃れるための信仰が盛んになりました。
ダンテの『神曲』とはまた違う、日本独自の地獄。舌を抜かれたり、針の山を登らされたり、血の池に追いやられたり、考えられる限りの残虐な拷問をされる亡者はやはり気の毒。
有難いのは、「再審制度」や「執行猶予」という方法もあること。近代的だ!と思っていたら、その制度の恩恵にあずかれるのは、遺族が追善供養してくれるかどうかにかかっているとのこと。
やはり「地獄の沙汰も金次第」という、あのことわざは真実だった!
仏の道は女性に厳しい
気になったのは、「熊野観心十界曼陀羅」などで描かれていた「子どもを産めなかったり産まなかったりした女性」が堕ちる不産女(うまずめ)地獄。
灯心で竹の根を掘る「内職みたいに辛気臭い責め苦」を永遠に味わわされるそうです。なんで??
これって立派なマタニティハラスメントでは?? 子供が欲しくても授からなかった女性もいただろうに。紫の上とか、秀吉正室の寧々さんもここにいるのかな? かわいそうすぎる。
この他にも、出産や生理などによる血の不浄で落ちる血の池地獄などがあり、これだと幼くして亡くなった少女以外は、女性全員地獄行きではないですか!
以前、半村良さんの『妖星伝』で「神の道は女子には厳しい」という台詞が心に残ったのですが、仏の世界も本当に男尊女卑! 今はどうなのかな?
1人の男性を2人の女性が取り合う両婦地獄に対抗して、1人の女性を2人の男性が取り合うパターンも描いてほしいなと思いました。
だるま商店の極彩色屏風が凄い!
さて、色々な寺宝を見て回りましたが、一番印象的だったのは、現代の作品。
若手アーティスト(CGクリエイター)だるま商店さん(絵描きユニット)による「篁卿六道遊行絵図屏風」。
とにかく極彩色で美しく、幻想的で、現代風で、少しユーモアもあって、見ていて飽きない絵なのです。ちゃんと小野篁さんが、遣唐使を拒否してるし。
この素敵な屏風も撮影禁止。画像など詳しくはこちらをご覧ください。
冥府通いの井戸と、黄泉がえりの井戸
さて、今回のお楽しみの1つが、今まで遥かに覗くだけだった「小野篁冥府通いの井戸」を見学できること。
縁側からの撮影に限って、写真撮影もOKでした。思いっきり望遠撮影。
井戸のそばには、いかにも清らかな「小野篁公黄泉がえりの井水」も流れていたので、一口飲んでみました。なかなかおいしい。
でもどうやらこの水は、水占い用の水だったのですね。飲んでよかったのかな?
冥府通いの井戸の底を覗くと、空や私たちの影が映ります。
でも、少し離れた場所にある「黄泉かえりの井戸」は水深100mでとても深い!
小野篁は、この深い井戸から現世に戻ってきたそうです。
六道珍皇寺の御朱印
参拝の記念に、御朱印を頂きました。御朱印帳をお預けし、番号札をもらって、拝観が終わってから引き換えます。
御朱印は二種類あるのですが、違いがよく分からなくて、好みで指さした方を書いてもらいました。
それがこちらです。公式サイトで確認すると、私の頂いたのは「医王殿」の御朱印で、「薬師如来」の御朱印がもう片方の方でした。
他にも限定御朱印や御朱印帳など、購入意欲をそそられるものがたくさん!
なお、御朱印は毎日頂けるわけではないので、事前に授与の日程を公式ホームページで確認してくださいね。
小野篁は現代でも、多くの小説やゲームなどにも登場しているので、とても人気がありそう。
私はそういう小説やゲームは知りませんが、なかなか面白い人物で、私も好きです。確か万城目学さんの『鴨川ホルモー』にも、主人公の友人「高村」くんとして登場していたような。
まだ少年のような、ハンサムな小野篁君のクリアファイルなどもあって、小野篁人気の根強さを知ることができました。
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