偶然見かけた芦屋川の地域防災訓練
2025年2月9日(日)、同じ兵庫県にありながら、今まであまりよく知らなかった芦屋の名所旧跡を訪れる機会がありました。平安初期の歌人・在原業平(ありわらのなりひら)の父・阿保(あぼ)親王の墓と伝わる阿保親王塚古墳や、芦屋神社を訪れた後、
在原業平ゆかりの地・月若公園近くの祠に向かいました。

芦屋神社から月若公園に行く途中、芦屋川沿いの道を通ったのですが、何かイベントをやっているのか、人だかりがしています。なんだろうと近寄ってみたら


地域防災訓練が行われていたのでした。

加えて子供たちも参加できるようにでしょうか。雪まつりも行われていました。

今年(2025年)は阪神淡路大震災から30年の節目の年。この地域は震災だけでなく、1938年に阪神大水害もあったのですね。歴史を風化させないという住民の心意気を感じました。
謡曲「藤栄」の登場人物に因む地名
私たちが次に目指す「月若公園」は、「月若町」の一角にあります。なかなか素敵な地名なのですが、実はこの地名は、謡曲の登場人物に因んでいました。
鎌倉時代中期、5代執権だった北条時頼(北条時宗の父)は、執権職を義兄に譲って出家。大河ドラマ『北条時宗』では、あの渡辺謙さんが演じました。その北条時頼は、敵対勢力には厳しかったけれど、御家人や民衆には善政を敷いたとされ、引退後は修行僧(最明寺入道)の姿で諸国を廻って民情を視察し、時には悪人を懲らしめたという伝説を生みました。
その伝説をもとにした謡曲の1つが「藤栄(とうえい)」。修行僧姿の時頼は、芦屋の貧しい海人の家に一夜の宿を借りますが、その宿の主人がまだ幼い少年。しかも気品があり、普通の海人とも思われないので時頼が素性を尋ねると、彼は芦屋の地頭(領主)の子・月若と名乗り、父の死後、悪い叔父の藤栄に所領を奪われてしまったと訴えました。時頼は藤栄を懲らしめて所領を月若に返させ、正しい政の道を示してまた旅路につくという、まるで水戸黄門のようなストーリー。謡曲だけのネタではもったいないので、渡辺謙さん主演で『最明寺入道漫遊記』制作してもらえないかな。

謡曲は、室町時代頃に作られたものが多いと思うのですが、中世の人々も、このような勧善懲悪ストーリーが大好きだったのですね。芦屋の人々も、この謡曲を愛していたから、登場人物に因む地名を付けたのでしょう。
実はこの月若公園近くにある祠も、別の謡曲に因む祠なのですが、それはまた次回にご紹介します。お楽しみに。
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