大河ドラマで学び直せる日本史 薩摩藩と琉球王国(『西郷どん』第5話)

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西郷どんが相撲に燃えた理由

『西郷どん』第5話では、島津斉彬や姫君たちの前での相撲大会が印象的でした。

(『西郷どん』公式サイト「週刊西郷どん見せもす!舞台裏 御前相撲」をご覧ください)

篤姫や村田新八(実はとてもイケメンです!)も良かったけれど、父親がお由羅騒動に連座(つまり斉彬派でした)して喜界島に流され、自身も罷免されて謹慎の身となってしまった大久保利通が気の毒でした。

大久保利通は胃が弱かったため、武術は得意ではなかったものの、討論や読書などの学問は下加治屋町では抜きんでていたと言われます。

大久保利通の父親は、沖永良部島に赴任したり、琉球王国との連絡調整機関である「琉球館」で勤務していました。

英和辞書が大久保家にあったかどうかはともかく(なかったと思う)、海外と接触する機会の多い仕事です。大久保家には、ちょっとハイカラな文物があったかもしれません。

西郷どんは、親友で3歳下の後輩でもある大久保利通のために、彼とその父親の赦免を殿さまに直訴しよう!と頑張ったのでした。

ところでどうして薩摩には、「琉球館」という施設があるのでしょうか。

日本と琉球王国の関係とは

戦国時代の九州で勇猛を誇った島津家は、秀吉の九州征討、関ケ原の戦いで連敗し、あの井伊直政(島津隊との戦いで重傷を負いました)のとりなしで本領安堵はされたものの、薩摩藩としての地固めをする必要がありました。

一方、琉球王国との貿易を独占したい薩摩藩と、自由貿易を貫きたい琉球王国との関係は悪化。

1602年、仙台藩領内に琉球船が到着し、徳川家康の計らいによって翌年琉球へ送還されるという事態が起きました。

家康は薩摩藩を介して、琉球王国の朝貢使節(謝恩使)を派遣するよう求めましたが、琉球王国は拒否。

琉球王国にすれば、明(中国)には朝貢するけれど、日本は自分と同レベル。朝貢する義務はない、というわけです。

足利義満は日明貿易のために朝貢貿易を受け入れ(そうしないと貿易許可証である勘合符が貰えません)、日本も琉球王国も明の属国扱いとなり、明の皇帝から「日本国王」「琉球国王」に封じられるという冊封(さくほう)体制の中に入っていました。

ところが日本は戦国時代となって明の冊封体制から離脱し、豊臣秀吉の唐入り(からいり=明国出兵)となったのです(実際は朝鮮出兵でしたが、本当の狙いは明でした)。

秀吉は朝鮮に日本軍の道案内をさせるつもりでしたが、朝鮮にしてみたら、自分たちに命令できるのは明国だけであり、朝鮮と同じレベルの日本の命令を聞かねばならない義務はない。つまり朝鮮も琉球も、感覚は同じだったのです(多分、この感覚が当時の東アジア世界の常識)。

家康は秀吉と比べると「平和外交」の印象が強いですが、それでも琉球王国を従わせたかったのでしょう。

薩摩藩の琉球侵攻

1609年、薩摩藩主島津家久は、薩摩軍3,000人を琉球王国に侵攻させました。琉球王国は敗北し、国王は薩摩藩主と共に大御所徳川家康と将軍秀忠に拝謁しました。

島津家久は、家康から琉球王国の支配権を承認され、琉球王国から奄美大島を割譲して直轄領にすることも認められました。

薩摩藩は琉球王国を属国とし、国王を存続させて中国(明、のちに清)との朝貢貿易を続けさせ、貿易は薩摩藩が監督することとしました(この書類に署名することを拒んだ琉球王国宰相の1人は斬首されています)。

以後琉球国王は、国王の代替り毎に謝恩使・将軍の代替り毎に慶賀使を将軍のもとに派遣する義務を負いました。その使節には異国風の服装をさせたため、将軍に異国の国王が朝貢していると庶民は認識。

ちなみに謝恩使は「おかげさまで、新しい国王に就任できました。将軍様のおかげです」

慶賀使は「新しい将軍様、おめでとうございます!」という意味ですね。

江戸時代には、将軍の代替わりの時期を中心に朝鮮王国からも「通信使」という国王の使者が派遣されましたし(対等外交の使節)、出島のオランダ商館長も、年に1回、貿易の「御礼」のため江戸城に赴く義務がありました。

こういう形で、徳川将軍の権威付けは行われていたのです。

薩摩の琉球館

薩摩藩では鶴丸城(鹿児島城)の東南に琉球館が置かれ、琉球仮屋とも称したそうです。

琉球王国の出先機関であり倉庫、宿館でもあった琉球館には。薩摩藩主への年頭慶賀のための年頭使が在番親方として、1年交代で逗留しました。

親方というのは、琉球士族が賜ることのできる最高の称号だそうです。

岩倉使節団の一員として欧米を歴訪し、西洋列強に学んで富国強兵・殖産興業路線を推し進めた大久保利通には、琉球の人々と接した父親を通じて、海外の情勢に対する興味関心が培われていたのかもしれません。

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