大河ドラマで学び直せる日本史 将軍慶喜と大政奉還(『西郷どん』第34話)

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慶喜は有能な将軍

『西郷どん』第34話は、本当にタイトル通り、慶喜が冒頭で将軍に就任し、終盤で大政奉還してしまいました。大河ドラマ初の(多分)、ものすごいスピードです!

14代将軍家茂が死んだ後も、彼はなかなか征夷大将軍に就任しようとしませんが、幕府が軍事政権である以上、第2次長州征討(これもものすごいダイジェスト! 高杉さんが、とうとう登場せずじまい)で惨敗した以上、一気に権威が地に落ちた幕府のトップに就任するのは「百害あって一利なし」。

長州との決戦に敗れた場合は、平家や鎌倉幕府が滅亡したときのように、処刑か自害しかありません。

そんなのまっぴらごめん! どうせ将軍になるなら万全を期さないと! というわけで、将軍に就任した後の慶喜の活躍は、とても目覚ましいのです。

会津藩・桑名藩の協力のもと、朝廷とは密接な関係を保ち、フランスのレオン=ロッシュ公使から援助を受け、軍事顧問団を招いて軍制改革も行っています。

大河ドラマで学び直せる日本史 パークスとロッシュ(『西郷どん』第33話)

2018年9月7日

パリで開催された万国博覧会には、弟の昭武を派遣し、幕臣子弟の欧州留学も奨励しました。

「権現様(家康)の再来」と謳われた慶喜を、イギリスのハリー=パークス公使も、高く評価していたのです。

ただし慶喜が、ドラマのように英語やフランス語を操っていたかはわかりませんし(少しは会話できたかな?)、フランスから薩摩をよこせと言われていたなんて、これはフィクションだと思います(ひどすぎる)。

あんな薩英戦争で丸焼けになった町より、琉球に近い島、或いは対馬や蝦夷地の方を、外国なら欲しがりそうなものだと思うのですが、どうなのでしょうか。

慶喜と薩摩藩との決裂

「将軍慶喜」実現に、多分天国の斉彬さまは大喜びのことでしょう。

でも、薩摩藩にしてみれば、自分たちの意見をほとんど聞いてくれない困った人。

慶喜は将軍就任前から、会津藩や桑名藩と密接に結びつき(「一会桑体制」と呼ばれます)、薩摩が目指す雄藩連合体制(オールジャパン)ではなく、将軍に権力を集中させる体制を目指します。

慶喜は驚異の粘り腰で朝廷に兵庫開港を認めさせ(勅許を得ました)、島津久光を中心として慶喜を糾弾するはずだった「四侯会議」を解散に追い込みます。

雄藩連合として政治参加がかなわなかった薩摩藩は慶喜との対立姿勢を強め、長州藩とともに武力倒幕に大きく舵を切ることとなるのです。

土佐藩による大政奉還の提案

一方、坂本龍馬や後藤象二郎など土佐藩勢力は、武力倒幕には反対でした。

薩摩藩や長州藩は関ケ原の戦いで西軍に属し、徳川に敗北した過去がありますが(特に長州藩は領地をかなり削減された恨みがあります)、土佐藩は山内一豊夫妻の尽力により家康に協力し、土佐一国の大大名となったいきさつがあります。つまり土佐藩は、徳川に恩があるわけです。

このため、平和的に政権交代ができる大政奉還案を、「船中八策」の中で坂本龍馬が提案。

土佐藩だけでなく、薩摩藩の家老・小松帯刀(たてわき)もこの大政奉還案を了承していました(薩土盟約)。この辺りは大河ドラマでは、全然出てきませんでしたね。

龍馬たちの構想は、幕府が朝廷に大政を奉還して権力を一元化し、新たに朝廷に議事堂を設置して国策を決定すべきとするもので、その議員は公卿から諸侯・陪臣・庶民に至るまで「正義の者」を選挙するものとされました。

これなら武力倒幕に伴う内戦も避けられます。平和的に政権交代ができるのです。

薩土盟約の解消

薩土盟約を結んだ薩摩藩ですが、本心は武力倒幕。

薩土盟約を結んだのも、「どうせ徳川慶喜は、大政奉還を拒否するだろう」と考えたからでした。

もし慶喜が大政奉還を拒否した場合、土佐藩は兵を率いて上京し、慶喜の将軍職を停止させる条文が明記されていました。

土佐藩の最高権力者・山内容堂(前藩主)は、大政奉還には賛成したものの、土佐藩の上京出兵や将軍職停止には反対し、結局薩土盟約も解消となりました。

大政奉還の成立

土佐藩はこの後、武力倒幕をもくろむ薩長両藩の先手を打って、大政奉還の建白書を老中を通して将軍慶喜に提出。

慶喜も同意し、10月13日、上洛中の40藩重臣を京都・二条城に招集し大政奉還を諮問し、翌日「大政奉還の上表」を朝廷に提出しました。15日に勅許が下され、大政奉還が成立しました。

幕府のみるところ、朝廷には政権を運営する能力も体制もなく、一旦形式的に政権を返上しても、依然として公家衆や諸藩を圧倒する勢力を有する徳川家が天皇の下の新政府に参画すれば実質的に政権を握り続けられると考えていたようです。

この時の朝廷は、まだ15歳の明治天皇と、徳川慶喜のいとこである関白・二条斉敬が中心。

まさに慶喜の思惑通り。「神君家康公の再来」と言われたのもよくわかります。

西郷隆盛ら倒幕勢力は、慶喜ペースで進むこの事態を、何とかしなければなりません。

西郷どんが、手段を択ばぬ「戦の鬼」になるというのが次回のストーリーのようですが、江戸の町を恐怖の巷に陥れた薩摩藩邸主導のテロ作戦は、ドラマでは描かれるのでしょうか。

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