軽めの夕食でも素材は豪華
今回も引き続き、1582(天正10)年、織田信長から安土城に招待された徳川家康を饗応するため、明智光秀が用意した献立を紹介しましょう。
『続群書類従(ぞくぐんしょるいじゅう)』という書物の中に記録として残されており、ジャパンナレッジで読むことが可能なので、興味のある方は原典もご覧ください。
参考にしたのは、以前ご紹介した施設「安土城天主 信長の館」サイトです。
前回紹介したように、安土城到着早々、家康に出された「おちつき膳」は、本膳~五膳に御菓子の膳がつくという超豪華なフルコースランチでした。
さすがに夕食の「晩御膳」は少し軽めにしてあります。食べる時間も遅めに設定したかもしれません。
でも材料を見ると、光秀が手を抜いていないのがよくわかりました。
本膳には煮物三品(素材は不明)、こまごま(するめ、アワビ、干魚、キクラゲなどを細く切って炒り酒と混ぜたもの)、鯛の干物、ごはん。
ここでもまた、家康の好物で縁起のいい鯛が登場!
昼は焼き鯛、夜は干物と調理法も変えています。光秀の配慮かな?
そして今回も、魚を塩と飯で漬け込み熟成させる「なれずし」が登場。
夕食に出されたのは、鮎すしでした。
鮒すしと鮎すしの違い
「おちつき膳」に出されたのは、今でも琵琶湖名物として名高い鮒ずし。
鮒の身の中に飯を詰め、その鮒と飯(いい)を交互に敷き詰め、半年ほど発酵させます。
鮒の身の中に詰められた飯は食べられますが、敷き詰められた飯は食べられません。漬物のぬか床のようなものです。
一方夕食に出された鮎すしは、漬ける日数が3~10日と少なく、漬け込むために敷き詰めた飯も食べられる、生成(なまなれ)という製法。
上の写真は、楽天市場の琵琶近江商店さまよりお借りしました。上の白っぽいのが鮎ずし。切り身が丸く並んでいるのが鮒ずしです。
家康は、どちらの寿司が好みだったのでしょうね。
初めて聞く名前の高級魚も!
二膳には、串あわび(串に刺して天日に干す)、夏が旬の高級魚・鯒(こち)のすまし汁、そして奈良漬け。
鯒という魚を初めて知りました(写真は『ウィキペディア』より)。歯ごたえのある白身魚だそうです。
三膳は煮あわびの盛り付け、鯛の煮物(たれ味噌の中で煮る)、つぼ(つぼ煮?材料不明)。
使い捨て食器で味わうシーフードディナー
続いて出されたのは、折箱(おりばこ)。足のついた台に乗せて、2折出されました。ちなみに折詰は、1折(ひとおり)、2折(ふたおり)と数えます。
日本だけに存在するこの白木(塗料を塗らない木)の食器は、一度限りの使い捨て。
貴族の食器としても重宝されたそうです。環境問題が叫ばれる現代とは、全く違いますね!
折箱の中に入っていた料理は、鰹の酢炒り、なまこの出汁煮、つぼ煮ではないかと思われます。
なまこのコリコリした食感、おいしそうですね!
ただ一つ問題があるとすれば、この献立には、野菜が奈良漬け以外ないかも!ということ。
全体的に、茶色の食材が多そうです。鯛の干物が赤くて彩りを添えていると思いますが、緑の野菜がないのが惜しい。
本膳の「こまごま」や三膳の「つぼ煮」の中に、もしかしたら野菜類が入っていたかもしれませんが、一口で言えばシーフードディナーです。
多分、いつもはもっと質素な食事だろうから(特に家康は健康オタクだから気を遣っていそうです)、問題ないかな。お酒ともよく合いそうですね!
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