2023年5月4日(木)、青森県の霊場恐山(おそれざん)を訪れました。
恐山にある極楽は、とても静かな場所だった
血の池地獄と
その近くの「まむし注意」という恐ろしげな看板(地獄より怖い!)を通り過ぎると
不思議な色をした湖が見えました。
見る方向を変えてみると、きれいな緑色が広がります。
でも空の色がこんな感じだし、場所が場所だけに、なんとなく神秘的な、少し不気味な雰囲気です。
しばらく行くと、まだ新しそうな仏像がありました。東日本大震災供養塔です。鐘を鳴らしている人もいました。
目の前に広がる宇曽利湖(うそりこ)。湖底から硫化水素が噴き出す酸性の湖のため、魚はウグイしか棲んでおらず、ヤゴなど水生昆虫、プランクトン、プラナリアはいるようです。でも生物は少なめかな。
ここは「極楽浜」と呼ばれている場所でした。
もっと天気が良かったら、青い空、白い砂浜、エメラルドグリーンの湖!と、やっぱり極楽だと思うでしょう。でもこの日はあいにく、空は曇っているし、冷たい風がとても強く吹いていました。だから南国の楽園ムードは全くなし。
それに、今までの絵画やお経(現代語訳など)でイメージしてきた極楽は、空がきれいで、花(特に蓮)が咲いて、鳥が歌って、天人も音楽を奏でて、かぐわしい香りがして、金銀宝石をちりばめた宮殿があって、というもの。
それに比べると、この景色は色があまりなく、花は咲かず、鳥の声もせず、風の音ばかり。そして風に乗って硫黄の臭いがする。
ふと昔読んだ半村良さんの『妖星伝』の中に、花が咲き、蝶が舞い、鳥が歌うという私たちがよくイメージする美しい世界(=極楽)は命が生きるための戦い(殺し合い)がある実は醜い世界。岩だらけでごくわずかの生命しかない場所こそが、美しい場所だと書かれていたのを思い出しました(初めて読んだとき、とても衝撃を受けた場面)。
無機質の極楽浄土。
モノトーンの静かな極楽が、霊場恐山にはあったのでした。
恐山温泉は本物の極楽! 恐山は元鉱山だった!
極楽浜を過ぎると
カラフルな風車が供えられている無縁仏や
五智如来(密教で5つの知恵を5体の如来に当てはめたもの)が並ぶ丘を通り
展望台からの眺めを堪能して
(卒塔婆?が倒れているのも見えてちょっと心配)
元の境内へと戻ってきました。
バスの時間まで余裕があったので、気になっていた共同浴場へ! 女湯の「冷抜(ひえ)の湯」へ向かいました。
霊場恐山を開いた円仁の時代からここに温泉があったわけではなく、明治〜昭和初期に恐山を硫黄鉱山(火薬の原料となる硫黄は当時貴重品)として利用していた時期、掘削時に噴出したものだそうです。ちなみに戦後、石油から硫黄分を大規模に抽出する方法が実用化されると、硫黄原石の価値が暴落し、1969(昭和44)年に鉱山は閉山しました。
つまりこの辺りは、鉱山の跡地なんですね。建物も戦後にできたものが多いのかな? 新しそうな建物が多いのはそのせいかな。
温泉は入山料500円を払っていれば、追加料金なしで利用できます。硫黄泉なので、入浴時間は3~10分程度がいいとのこと。あまり長湯してはいけないのですね。
ちょうど誰もいない時間帯に入ることができました! 少し集めのお湯ですが、硫黄の臭いのせいか、効果がありそう。
湯船の底に湯の花が溜まっていたり、素朴な共同浴場の建物を見ていたりすると、蔵王温泉の共同浴場が思い出されました。
あの時も窓から風が(ついでに雪も)吹き込んできたのです。
素朴な共同浴場も、なかなかいいものだと思いました。
御朱印とイタコ、車窓から見た美しい宇曽利湖
最後に御朱印(300円)を頂きました。
夫と長女は、私が御朱印をもらう間、本堂の横にある休憩所で待っていたのですが、実はこの場所は
イタコの口寄せの行われている部屋の隣だったのです。私の耳にも数珠が鳴る音や、歌うような唱えるようなお経?の文句が聞こえたりしました。たまたまこの日はGWだったからか、イタコが1人おられたようです。イタコの口寄せの片鱗を、少し体感することができました。
帰りの下北交通バス。鮮やかな赤がまぶしい!
晴れてきたせいか、太鼓橋も赤が鮮やか。
宇曽利湖も、最後の最後でやっと美しい色を見せてくれました。
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