浮舟と匂宮の名場面「宇治十帖モニュメント」と、椿の「ヒカルゲンジ」
2023年、京都府宇治市を訪れる機会がありました。
『源氏物語』の後半「宇治十帖」の舞台ということで、全く架空の物語ながら、そこに登場するゆかりの地や、登場人物が住んでいたであろう場所を「聖地巡礼」として訪れることが江戸時代から盛んになり、石碑などもあちこちに建てられています。
朝霧橋のたもとにも、「宇治十帖」にちなんだモニュメントがありました。
光源氏の孫・匂宮(におうのみや)が、光源氏の子(本当の父は別人)薫の愛人・浮舟(うきふね)を薫の別荘から、宇治川対岸の隠れ家に連れ出す場面です。律儀だけれど優柔不断。あまり女性の気持ちをわかってない薫に対抗意識を持ち、また浮舟に興味があった匂宮は、薫に成りすまして浮舟と一夜を共にし、浮舟も情熱的な匂宮に心惹かれ、図らずも三角関係になってしまいます。
匂宮が浮舟を略奪しなければ、悲劇(匂宮との秘密が薫に露見し、浮舟は宇治川に身を投げるが死にきれず出家する)は起こらなかったのですが、祖父の光源氏のように匂宮は恋多き人でした。
モニュメントのそばには、「ヒカルゲンジ」という種類の椿が植えられています。
調べてみると、江戸時代後期に誕生した品種だということでした。もっと最近の種類だと思っていたのでびっくり! 今でも、そして海外でも人気のある品種のようです。
宇治市源氏物語ミュージアムで、姫君の世界を垣間見
これだけ宇治と関係が深い『源氏物語』について学べるのが、
2023年3月にリニューアルされました。入場料は1人600円です。
まず『源氏物語』前半の主人公・光源氏の物語の名場面。伊予介という中流貴族の後妻・空蝉(うつせみ)が先妻の娘・軒端荻(のきばのおぎ)と囲碁に興じている姿を、若き光源氏が垣間見しています(この後強引に空蝉と一夜を共にします)。浮舟と似た展開ですが、空蝉は人妻という立場を考え、以後は彼を遠ざけます。そして夫に先立たれると、継子に求愛されますがそれも退けて出家。やがて光源氏が別邸(二条東院)に引き取って面倒を見ます。空蝉は、紫式部がモデルとも言われていますね。
当時の女性の部屋や
女性たちの遊びも紹介されていました。貝合わせや
今とは違うスタイルの双六(すごろく)、
そして漢字の偏(へん)と旁(つくり)を組み合わせる「偏つぎ」という遊びが行われていました。
光源氏の屋敷・六条院の模型です。彼は春夏秋冬それぞれの町を造り、主な夫人や子供たち(養女含む)を住まわせました。
幻想的な橋を渡ると
「宇治十帖」の世界。物語の紹介や、薫が宇治の姫君たち(姉の大君と妹の中君)を偶然垣間見る場面が再現されています。まさか誰かが来るとも思わず、姉妹は月を見ながら、楽器を演奏していたのです。やはり恋は、垣間見から始まるのかな。
映像コーナーでは、篠田正弘監督の人形劇「浮舟」(声の出演は岩下志麻や葉月里緒奈!)や
オリジナルアニメ『GENJI FANTASY ネコが光源氏に恋をした』が上映されていました。「宇治十帖」や『源氏物語』の作者である紫式部について、理解が深まると思います。
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