「西郷隆盛とその時代 元治・慶応期を中心に」 (その1)

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NPO法人京都歴史地理同考会主催の講演会「明治維新150年 西郷隆盛とその時代ー元治・慶応期を中心に」を、夫と聞きに行きました。

講師はテレビなどでも活躍されている、神田外語大学准教授の町田明広先生です。

町田先生のツイッターの発言で、昨日(講演会当日)偶然この講演会があるのを知り、予定がないのを幸い、行ってみることにしました。

講演会は6月24日(日)、15:20~17:20にキャンパスプラザ京都第2講義室で行われ、京都らしく着物で参加された方々もいて、大盛況。

幕末の西郷どんの活躍について、詳しく学ぶことができました。

その中から印象に残った点を、いくつかご紹介します。

司馬さんの知らなかった島津久光と小松帯刀

幕末~明治の時代で私たちがイメージする世界は、司馬遼太郎さんが小説で描いたイメージがもとになっていると言われます。

『竜馬がゆく』『飛ぶが如く』『燃えよ剣』『花神』『世に棲む日々』など、多くの作品を残した司馬さんですが、当時司馬さんが見ることのできなかった史料がありました。

それが、島津久光や薩摩藩の家老であった小松帯刀(たてわき)に関する史料。

特に小松帯刀については、現在吉川弘文館の「人物叢書」シリーズで小松帯刀について著書を出しておられる高村直助氏(東京大学名誉教授 横浜市ふるさと歴史財団理事長)ですら、2008年にNHK大河ドラマで放映された『篤姫』によって、彼の存在を知ったというくらい(私と一緒!)。

研究者の間でも、ほとんど注目されていない人物だったそうです。

そのため司馬さんの作品の中では、小松帯刀の描写もあまりなく、島津久光に至っては、悪役(それも滑稽な)として描かれることもあるなど、龍馬や西郷の活躍と比べると、分が悪いとしか言えません。

司馬さんが多くの著作を書いた50年前(ちょうど明治維新100年にあたる)は、そのような時代認識でした。

薩長同盟の主役は小松帯刀?

司馬さんの時代から50年が経過した現在では、島津家の史料や、分散していた小松帯刀関係の史料が、多数発見されました。

幕末の西郷隆盛の上司が小松帯刀、その上司が島津久光であるため、この2人と西郷との関わりを、もっと深く調べておく必要があるそうです。

通説では西郷隆盛の活躍!と紹介されている場面でも、実際は小松帯刀の尽力だったということも、これから出てくるかもしれません。

例えば薩長同盟。

通説では「西郷隆盛と桂小五郎(木戸孝允)が締結した」となっていますが、町田先生は「小松・木戸覚書」と言っておられました。

薩長同盟自体も、当時は坂本龍馬の仲介で締結されたとは認識されておらず(龍馬は完全に薩摩側の人間として認識されていたようです)、明治になってから、坂本龍馬の功績をPRしたい土佐系の人々によって、龍馬仲介説が創作されたのではないかとのこと。

ちなみに町田先生は、今年中に『薩長同盟』という本を出版される予定だそうです。

新たな説が、定説となるのでしょうか。楽しみです。

小松帯刀に光は当たるか

講演会のの主催者・NPO法人京都歴史地理同考会は、大河ドラマにも登場する京都の隠れた史跡を顕彰し、石碑を建立されています。

最初に建立された石碑は、小松帯刀の寓居(近衛家の堀川邸「御花畑」)跡。

詳しくはこちらをご覧ください。

小松帯刀は薩摩藩の家老として、幕末の政局や薩摩藩の藩政改革に活躍したものの、35歳という若さで病死してしまいました。

彼がもっともっと長生きしていたら、歴史は大きく変わっていたかもしれません。

小松帯刀と五代友厚

小松帯刀の最期を大坂で看取った側室の琴は、京都祇園の芸妓でした。

彼女は長男を、子供に恵まれなかった正室の千賀に預け、長女を連れて大坂の五代友厚のもとに身を寄せました。

このエピソードは、以前放映されたNHK『歴史秘話ヒストリア こんなダンナですみません!愛され実業家・五代友厚』でも紹介されていました。

小松帯刀の書簡など、重要史料が五代友厚の家に保管されていたのは、2人の友情の証だったのです。

今回の気づき

歴史の新しい側面に光を当てるのは、やはり第一次史料、いわゆる「古文書」の研究です。

私の家には古文書はありませんが、「家に古文書がある」という方もかなりおられるのではないかなと思います。

有名人の名前は出てこなくても、地域の歴史や当時の物価などを解き明かす、貴重な史料になることも多いのです。

「そういえば家に古文書があったな」という方は、大阪市立図書館の「古文書の整理と調査」というサイトをご覧ください。

史料の大切さや保存・活用に至る方法について、改めて考えさせられた今回の講演会でした。

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